ワルシャワ、二つの顔を持つ男

わるしゃわふたつのかおをもつおとこ|JACK STRONG|JACK STRONG

ワルシャワ、二つの顔を持つ男

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レビューの数

4

平均評点

70.8(8人)

観たひと

11

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0

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー / アクション
製作国 ポーランド
製作年 2014
公開年月日 未公開
上映時間 107分
製作会社 Scorpio Studio
配給
レイティング
カラー カラー
アスペクト比 16:9
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

アメリカとソ連の冷戦時代に実在したスパイ、コードネーム:ジャック・ストロングを描いたサスペンス。監督は「カティンの森」のヴワディスワフ・パシコフスキ。日本劇場未公開。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

アメリカのソ連に対する核攻撃がポーランドの領土上で行われていることを知ったククリンスキー大佐は、CIAのスパイとして機密文書を流し始める。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023/07/30

2023/08/24

70点

選択しない 


昔は裏切り者、今は英雄

ネタバレ

 冷戦下のポーランドにおけるスパイ活動をスリリングなタッチで描いたポーランド映画。日本では劇場未公開扱いだったようだけど史実に基づいた内容はなかなか重々しいもので、当時の(70年代)ポーランドの難しい立場を浮き彫りにしたなかなか見ごたえのある一作だった。
 西側に情報を流したとして捉えられたスパイが生きたまま溶鉱炉で焼かれるというショッキングな処刑シーンを冒頭に振っていることがあとで効いてくる。
 主人公のククリンスキはポーランド軍の高官であり、プラハの春での鎮圧を指揮したこともあるがちがちの保守派という立場ではあるけれど、国内での反ソ抵抗運動(連帯を指す)にも冷徹に対処する軍の方針に従うことができずスパイ活動を行うことに踏み切っている。
 ソ連が崩壊した現在から見ればこのククリンスキの行動は自由のために活動した英雄と捉えられるのだろうが、当時のポーランドではあくまで裏切り者という認識であったろう。スパイというのはそもそもそういうものだが。
 その彼が軍上層部の眼を盗んで重要な戦略情報をCIAに流す。その様子がスリリングに描かれている。スパイ映画らしい緊張の連続は歴史映画という重み以外にもエンタメ要素も付け加えられる。バレたら溶鉱炉が待っているというわけだ。
しかもククリンスキには家族がいる。彼らを巻き込まないようにと苦心、奔走するククリンスキの孤軍奮闘に手に汗を握る。
 P・ウィルソンら米俳優も参加しているけれど、映画はあくまでポーランド人俳優らによる芝居で占められ、自国の暗い過去への真摯な対峙が欧米が描く東側とは違う重厚さを感じさせた。悲しいエピローグもスパイ活動の非情さを印象づけた。

2017/06/17

2017/07/20

70点

VOD/GyaO! 
字幕


コードネーム、ジャック・ストロング。

ワルシャワ条約軍とはどこに忠誠を誓うのか、祖国ポーランドはソ連の核施設が作られ、
アメリカ・NATO軍の標的ともなって核戦争の最前線となっていた。有事の際はソビエト軍
がポーランド軍を率いる形となり、民主運動の「連帯」は敵となる。すでに異議を申し立てる
労働者たちを弾圧する軍隊になっている。主人公のククリンスキー大佐はワルシャワ
条約軍のチェコ侵攻でプラハの春を潰した軍事作戦を立案した優秀な幹部だったが、
現体制に疑問を持ち、最高機密情報をCIAに流し始めた。実話を基にした作劇で、
ジョン・ル・カレ風の重苦しい情報戦を描いた。ソ連の番犬を拒否すれば、アメリカに
すりよるしかない選択は小国の悲哀を感じさせる。日本もしかり。冷戦下では売国奴、
NATO軍にくら替えした現ポーランド軍にとっては先走った英雄となるのか、ククリンスキー
の隘路の選択に立ち眩む苦悩がもう少し表現できれば良かったのかな。

2017/06/19

2017/06/19

80点

VOD/GyaO!/レンタル/PC 
字幕


ヴワディスワフ・パシコフスキよ欲を持て

ポーランドのポーとは平地と言う意味、その国土のほとんどは自然の障害物が少ない平地なので、防衛戦を破られ一旦攻め込まれると阻止するのが難しく、この国は度々世界地図から消滅の憂き目を経験している、なので今はNATO加盟国でありながら、物理的な軍備よりも諜報とかの情報戦略を重視する国防戦略が取られている、今作の時代は東西冷戦の末期、独立国とは言え東側陣営の一員としてソビエト連邦が事実上の宗主国であり、作中でも描かれているが軍事面の圧力は凄まじい、今作はこの様な状況下での実際の出来事であり、映画として多少の脚色はされているだろうが、基本的にはほぼ事実である、これは情報開示されたアメリカの資料からも裏付けされている、主人公のリズサルト・ククリンスキー大佐が亡命に至ったのは1981年、ワレサ議長が連帯を結成してその直後に軟禁され、国中に戒厳令が布告されるタイミングでの事、間一髪の亡命劇は映画用に作った話では無く、実際の話である、私は子供だったけどワレサ議長軟禁のニュースは良く覚えているし、後にアイルランドのバンド、U2なんかはこの出来事を歌にして大ヒットさせた、東西の緊張が極度に高まり、ニュースのコメンテーターなんかも、ポーランドの治安維持を名目にワルシャワ機構軍がいつ進駐してもおかしく無く、そうなれば西側としてもそれなりの対応は必至であり、またこの当時は両陣営の公然の秘密平時である、中性子爆弾が盛んに噂されていた時期でもあって、今思い返して見てもキューバ危機に匹敵する緊張した情勢だった、結局ソビエトのブレジネフ書記長は自重し時間の経過の中で収束していったけど、リズサルト・ククリンスキー大佐がスパイとして西側陣営に果たした役割は大きく、それは今作でも入念に描かれている、もし第三次世界大戦が起きるのならこの頃のこのタイミングだったかも知れなく、そう考えるとこの人は世界を滅亡の危機から救った英雄と言っても決して過言では無いだろう、冒頭の入りは主人公が尋問されているシーンから始まる、この時点では誰から尋問されているのかは解らないが、事前にスパイの非情な運命を観ている事で、作品全体の緊張感は持続される、そしてそれが伏線となり、ついにはラストまで引っ張る、決して新しいとは言えないしオリジナルでも無いけれど、今作の題材の性格に合った素晴らしい演出だ、パトリック・ウィルソンが主人公に勲章を見せる、軍人らしい反応を観る側は期待するシーン、だが複雑な表情を一瞬捉えただけで切り替わる、ここは演出次第では最高の見せ場になるのだが、監督のヴワディスワフ・パシコフスキはあえて捨てている、実際にこの通りだったのかは知らないが、ククリンスキー大佐を軍人と言う側面よりも、一人のポーランド人として、夫であり父親として描きたかったのだろう、それらのエピソードは終盤近くになると頻度が上がり、ドラマに深みを与えている、この題材を単なるスパイ物映画にはしたくはなかったの制作側の思いが伝わってくる、主演のマルチン・ドロチンスキーはポーランド国内ではきっと名の有る役者なんだろう、ため息が出る程に役に入り込んでいて、これ以上何も言うことが無いくらいだ、スピルバークも「ブリッジ・オブ・スパイ」で大スターのトム・ハンクスなんか使わずに、マーク・ライランスとバランスの取れたキャスティングをしていれば、もっと高い評価になっただろうに、最後にククリンスキー大佐の二人の息子は不自然な死を遂げている、何かの勢力からの報復があったのだろうか

2015/10/12

2015/10/12

72点

レンタル/DVD 
字幕


英雄か裏切り者か

ポーランドでは有名な方らしい。原題では日本人に通じないからこのタイトル。ある程度の知識がないとさっぱりなので軽く調べながら鑑賞。それでも置いてかれそうになるのは、つまらないからではない。しかし狭間で苦悩するスパイを表現したかったとはいえ、いきなり愛人がいると疑われたのはちょっと。