女人、四十。

にょにんしじゅう|女人四十|SUMMER SNOW

女人、四十。

レビューの数

1

平均評点

67.9(14人)

観たひと

30

観たいひと

1

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 香港
製作年 1995
公開年月日 1996/6/15
上映時間 101分
製作会社 誠冠有限公司
配給 ツイン=大映・東光徳間
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督アン・ホイ 
脚本チャン・マンキョン 
エグゼクティブプロデューサーレイモンド・チョウ 
製作アン・ホイ 
撮影リー・ピンビン 
美術ウォン・ヤンクァイ 
音楽大友良英 
アソシエイト・プロデューサーロジャー・リー 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャリアウーマンの中年女性が、アルツハイマーの義父の世話をする姿をハートフルに描いた人間ドラマ。監督は香港ニューウェーブの旗手のアン・ホイ。主演のジョセフィン・シャオが、ベルリン映画祭主演女優賞を受賞

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

姑の死をきっかけに、老人性痴呆症になった舅を預かることになった四十過ぎのメイ。仕事をやめることが出来ない彼女たちは昼間だけ舅を施設に預けるが、彼の純粋な感性に触れるうち、メイのなかで次第に家族に対する考え方がかわってくる。そして、ある日一家でピクニックに繰り出すが、楽しげに振る舞う皆を前に舅は……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1996年6月下旬号

特集 女人,四十。:アン・ホイ監督 インタビュー

特集 女人,四十。:作品評

COMING SOON【新作紹介】:女人,四十。

2018/03/22

78点

レンタル/東京都/TSUTAYA/TSUTAYA 恵比寿ガーデンプレイス店/DVD 


プラマイゼロの人生のプラスを増やそう。

ネタバレ

40代有職主婦、目下の悩みは「仕事」と「介護」。現代日本女性の悩みと全く同じだが、本作の舞台は90年代の香港。つまり40代女性の悩みはいつでもどこでも変わらないということだ。

優しかった姑が亡くなってから、認知症になってしまった舅リンの面倒をみることになったメイ。もともとリンとはソリが合わなかったが、亭主を含めた実の息子、娘たちは全く当てにならない。同居していることもあり、貧乏くじを引くはめになってしまったのだ。

元軍人のリンは、ことあるごとに徘徊したり、傘をパラシュート代わりに屋上から飛び降りたりと突飛な行動を繰り返す。厄介なことに体格が良いため、ぶらさがった体をひっぱり上げるだけでも重労働だ。そのうえ仕事ではバリバリのキャリアウーマンとして会社で一目置かれていたはずが、パソコンを使える若い新入社員の入社によってメイの立場は危うくなり始めている。

八方ふさがりのメイだが、彼女には持ち前の明るさと強さがある。服を着たままお風呂に入ってしまったリンを叱らず、洗濯する手間がはぶけると、洋服ごとゴシゴシ洗ってしまう機転の良さが頼もしい。

姑の突然死から始まり、相談に乗ってもらっていた近所のおばさんを癌で亡くすなど身近にある「死」や、肉親内でのエゴの応酬などマイナスな面が多数描写されているにもかかわらず、本作はとても明るい。それらの辛い部分をコミカルに描くことで、前向きに生きれば小さな幸福が手に入るという人間賛歌となっている。

パソコンが使えなくても、データ消失しない記憶力を持っている。やりがいのある仕事を辞めても、今後は夫婦水入らずの生活ができる。介護は大変でも、夫や息子と団結できる。悪いことがあっても良いこともある。人生プラスマイナスでできているのならば、前向きになる分ちょっぴりプラスが増えるはず。

夏の日、白い綿毛がフワフワと舞い落ちる様を見て、雪が降ってきたと喜ぶリンの横で微笑むメイ。感動的で美しいこのシーンに、普遍的な家族愛、人間愛をみた。美しいものは美しい、どんな事情があろうと家族は家族、メイも夫も息子も、あからさまに父を厄介者にしていたリンの実の娘さえ、皆リンのことを愛しているのだ。ラストシーン、リンがメイに渡す赤い花で、またメイの人生のプラスがちょっぴり増えた。そしてこんな幸せな映画を観た私の人生もちょっぴりプラスが増えているはずだ。