なし崩し的に始まったような導入部。レア・セドゥのビキニのダンスに惹かれますが、主人公はサムの方でした。サムは、母の目の前で拳銃自殺した父を目の当たりにし、その後精神を病んだ母の元で弟と共に育ち、やがて母は入院。育児拒否の家庭で、トラウマを持って育ったため、寡黙でいつも思いつめたような風情の青年になっていました。それは、4人のロードムービーの中で過去の光景がフラッシュバックで語られていきます。ちょっと浮ついた感じの3人との旅で、ある意味気を紛らわせながらの旅ですが、ついに母に会う決意をします。
最後まで拳銃を握りしめ、ハラハラさせますが、撃ってしまえば、おまえは今まで何のために生きてきたんだという収拾のつかない結末になる訳で、いろいろとわだかまりを残しつつ、とにかく再び明日へと生きていこう、というような終わり方ではありました。ほぼ寡黙に語らない中で、旅をしながら思い直していくような展開は、ちょっとだけ、「パリ・テキサス」なんかも思い出します。素直に成長できず思い悩むサムは、その恨みを母へと持っていっているのですが、周りの人とのかかわりの中から、少しづつ変わっていったのだと思いました。
お目当てのレア・セドゥは、小悪魔的な行動で魅力的でした。映像も美しいもので、静かな基調ながらも神経質に急変したりする展開や、時折ハッとしたように流れる音楽など、独特の雰囲気であったと思います。