これは女性監督でなければ描けない作品。監督のオリジナル脚本。音楽と映画の融合を目指した
映画祭に参加するために、ふぇのたすの楽曲とのコラボとなった(Wiki)。
実際にふぇのたすのメンバーがカフェの店員に扮し、3回3曲のミュージカルシーンを演じ、主演の
森川葵がからむファンタジックで可愛さあふれるシーンとなる。
主人公キリコ(森川葵)はチョコなどの可愛いデコレーションの食べ物に目がなく過剰摂取、そのために
吐いてしまう過食症。外見はチョー美少女、しかし謙遜のカケラもない。可愛さを武器に誰より優位に
立つことを喜びとしている。同性からは総スカンを喰らうが、歯牙にもかけない。
映画界は数々のサイコキラーを生み出し、多重人格やらなんとかフェチまで百鬼夜行だが、
この面倒くさいキリコも相当凄い衝撃度だ。しかもすべてを可愛いさで因数分解するピンクの世界観。
しかしキリコになびかない男もいる。キリコの態度は男に媚びを売るものとして幸太は一切認めない。
可愛いか、可愛いくないか、の2パターンとは違う展開に、キリコの選択は微妙に悪い方へ向う。
あれほど堅固だった可愛さの結界が崩れ始めると、地滑り的な崩壊が始まった。
けっこう、怖い転落物語になり、キリコの再生はあるのか、という段階まで突き進む。
一番肝心なキリコの崩壊、乱雑に散らかった部屋に座り込む後ろ姿の長回しに驚いた。
観客は可愛い顔の変化を見たいわけだが、監督は引いたままカメラを動かさず、カットを割らない。
あらためて顔ではないのだよ、という監督のメッセージと解した。
面白さもあり、怖さもある異色な女性映画となった。