インディーズ系の製作会社だが、きっちりと商業映画として成功している。
まず着想がいい。主人公は志郎は新聞配達員で、プラモデル好きのさえない
独身中年男。毎日通う喫茶店のコーヒーと目玉焼きが大好きだが、本心は
ウェイトレスのユキちゃんが目当て。
そんなダルい日常の志郎は、ある晩オヤジ狩りの現場に遭遇、酔った勢いか、
持ち前の正義感か、被害者を救おうとしたが、残念ながら返り討ち。
しかしここで被害者の町工場のオヤジと知り合い、反オヤジ狩り作戦に参戦する
ことになった。志郎はネットでモトクロス用のプロテクターを買い込み、ヒーロー
衣装へ。町工場のオヤジはパチンコ玉を使った空気銃を、志郎はスタンガンを
プロテクターに電流を流す必殺技を開発、映画は一気にマニアックに。
クライマックスは、オレオレ詐欺集団につかまってリンチを受けているユキちゃん
の彼氏を取り戻すために、志郎が手製のヒーロー衣装で身を固め、殴り込みに向う。
ユキと彼氏は元劇団員、夢をエサに金をだまし取られ、高利の借金づけになって
しまった。このためユキちゃんはデリヘルのアルバイトまでしていたことを志郎は
知る。普通のおっさんに侠気が宿り、ヒーローアクションへ突っ走る。
手慣れた作劇、見事な小道具作りで、本業がビデオ撮影業とは思えない。
感心したのは、主要人物にも目配りが効いていて、それぞれ芝居に熱中したくなる
華がある。これなら、気合いが入るのは当然、劇団関係の人のような作品だ。
クラウドファンディングはどうだろうか。ぜひ次作も観たくなる、お見事です。