第二次大戦中のルーマニアの村で起きた珍騒動を描いた歴史映画。ウィキペディアで調べるとルー
マニアの立ち位置は枢軸国。映画でも、独軍のフリードリッヒが、神父ロマンの甥っ子のアレックスに
サイドカーバイクを勝手に乗らせるシーンがある。しかしそのフリードリッヒが首をナイフで切られ、絶命。
組織的なレジスタンスがある国のようにも思えないが、反ナチスの仕業か。
アレックスは神父のロマンに知らせる。町の要職者たちは、独軍に丸投げ。警察署長たち警官が
フリードリッヒの死体を独軍の駐屯地へ持ち込む。
独軍の駐屯地の大尉は、部下の惨殺に怒り心頭に発する。明朝の5時までに犯人を引き渡さなかった
なら、町の指導者10人を銃殺すると宣言。町の広場に10脚のイスと黒い目隠しがかけられ、プレッシャー
をかける。枢軸国側の友好国だが、この強圧的な姿勢は占領国と変わらない。
アレックスの遊び友達は中年男のイプ(ジェラール・ドパルデュー)、第一次大戦の死体の山からの
唯一の生き残り。しかし頭の中に銃弾が入ったままでほぼ廃人。村人の好意で生活している。
アレックスとはナポレオンごっごで遊ぶ。ラ・マルセイエーズを聞くと条件反射のようにピリッとする。
ルーマニア人なのだが自由と平等を愛する共和国びいきなのかな。
神父ロマン(ハーヴェイ・カイテル)の頭に浮かんだのが、イプの身代わり出頭。犯人を捜すことなんて
不可能。それだったら、イプにすべてを含ませて自首させよう。しかしイプにはそんな芸当は出来る
はずもない。医者はイプを診断して、一年も寿命がない、とにわか余命宣言。町長、署長、神父らは、
よってたかってイプを英雄に仕立て上げる。イプも満更でもなく、葬式のリハーサルまで要求。
さらには神父の持つ一等地の地所の権利、町長からの莫大な金銭の譲渡まで、書類に残すことになる。
今まで薄らバカを演じてきたイプの変わり身がオカシイ。
自己保身に走るお偉いさんを笑い飛ばすブラックコメディとして快調。dorosukeさんによると、オリジナル
があるようだ。基本線の骨格が担保されているのだろう。意外な収穫に喝采。