原題""Hawking""。BBC制作の90分テレビドラマで、ホーキング役をベネディクト・カンバーバッチが演じていることで話題になった。
ホーキングはビッグバン理論の研究者、というよりもALS(筋萎縮性側索硬化症)で車椅子に座った物理学者としてよく知られている。
その彼が21歳で病気を発症して、進行するALSと闘いながら特異点定理の博士論文を発表するまでを、1978年のノーベル物理学賞受賞式前日のロバート・ウィルソンとアーノ・ペンジアスのテレビ・インタビューと並行して描いていく。二人はベル研究所の研究者で、1964年にビッグバンの証明となる宇宙マイクロ波背景放射の観測に成功したことでノーベル賞を受賞したが、ホーキングの論文発表は1965年で、二人が観測当時、ホーキングの名前すら知らなかったことをインタビューで明らかにしているのが面白い。
本作はセミドキュメンタリーで進行するが、特異点定理が生まれるまでの過程は科学ドキュメンタリーではないので軽く触れられる程度。ホーキングを支える家族愛や恋人との恋愛、学内での青春シーンもあるが、かといって難病と闘う科学者の感動物語でもなく、むしろホーキングの伝記として観るのが妥当。
そうした点では過不足なく観られるが、科学ドキュメンタリー、恋愛物語、感動物語のどれを期待しても、十分ではない。
最大の見どころはカンバーバッチの演技で、ALSの進行に合わせて体が不自由になっていくが、正直、特にすばらしい演技をしているわけでもなく、若いカンバーバッチが見られるというファン向けの作品。