映画界でも移民問題、異文化との交流と現代的な悩みをテーマにする作品が
目白押しだが、本作は娯楽路線に上手く乗せ、むき出しのテーマが美味しく
調理された。脚本のスティーヴン・ナイト、演出のラッセ・ハルストレムと名うての
手練れが見事な仕事を見せる。
ムンバイのレストランの一家がヨーロッパに家族ごと移住する、しかもインド料理の
レストランを開く夢も持ち込む。一家を乗せたボロクルマはフランスの山道で立ち
往生。これも亡き妻の導きとパパは麓の町で売り家の看板があるレストランを買う
決意までする。腕をふるうのは息子のハッサン。亡き母からスパイスを受け継いだ
料理の天才だった。閉店へ追い込んだはずのレストランが再生する。ミシュラン
一つ星を誇るレストランオーナーのマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)はインド料理
レストランの出現に仰天。
戦争勃発。道路一本隔てただけのフレンチとインド料理の戦いだ。この宿敵の
構図にはロミオとジュリエットのようなラブロマンスも組み込まれる。ハッサンと
マグリットの恋だ。またハッサンはマグリットからフレンチの料理本をもらい、まったく
新しいフレンチを研究した。
スタッフの願いが後半に凝縮されている。ハッサンはマロリーの店のシェフは、
さらにパリの名店へ三段跳びの大出世。ハッサンが作り出す新しいフレンチは
ミシュランも注目、三つ星を取る料理人となった。
爽やかなハッピーエンドでお薦めの佳作となった。
なお各レビュアーが指摘している通り、ヘレン・ミレンの背中の芝居は必見ですぞ。