兄弟として,同じ衣装に身を包み,お揃いのサングラスをかけて,助手席と運転席で並んで,顔色を変えずに,悪さをしでかしている.その悪さの枷になっているのは,教会であり,シスターであるらしいのであるが,その孤児の施設からも破門をくらい,黒人居住区にあるらしき,教会では音楽的で躍動的な洗礼を受けている.
躍動は止まらない.ファンクなノリと地に足のつかないダンスが教会で繰り広げられる.跳躍までが見られる.「バンド」という神からの啓示を得た兄弟は,その暴走に拍車がかかる.消費社会を揶揄するかのように,黒と白とでクールなカラーに身を包んだ競売品のパトカーで,スーパーマーケットの屋内を疾走する.追っ手の警察を交わし,跳ね橋をジャンプし,銃撃や爆破といったテロリズムを潜り抜けていく.各シーンには音楽と説教があるようにも聞こえてくる.低い位置に構えられたキャメラがシカゴのストリートと兄弟たちの運動を仰ぎ見る.
ジェイクとエルウッドの運動とリズムは映画の進行に従い拡散していくように見える.かつてのバンドの仲間たちに声をかけ,共演を求め,会場パレスホテルを用意し,宣伝のために子どもたちを走らせる.そのパトカーには巨大な拡声器が取り付けられている.ナチスの残党のようなものたちも街頭に現れて運動している.彼らは橋から川に落下し,そして終盤のカーチェイスにも参加し,やはり建設中の橋から,あるいはとんでもない高所から落下し,地中に沈み込んでしまう.
パレスホテルは,兄弟を捕獲しようという警察によって包囲されていく.音楽のグルーブと地下への潜行によって兄弟は,包囲網を掻い潜る.兄弟は,地下の汚れによって泥に塗れる.また,それ以前に瓦礫に埋もれた際も黒いスーツを汚している.兄弟の愛車は,遂にエンジンを痛めつけられ,エンジンからはオイルが噴出し,フロントガラスが汚されていく.固定資産税を納税するためにその建物の階上へと向かう.都市は,この兄弟が帯びる汚穢を拭うべく,警察だけでなく兵までも動員し,その汚れに対し銃口を向け,指差しているようにも見える.