恋愛時代は大切に思って、相手が喜ぶようなことを色々と考えて、胸をときめかせる日々が過ごせるのに、どうして結婚してしまったらそういう関係が消えてしまうのか。ベリンダは夫に不満を抱いていた。結婚してからも、恋愛時代と同じような関係で繋がっていたい。しかし夫は仕事ばかりで、私のことを考えてもくれない。そこへ無言で付いて来る白いコートと帽子の、どこか憎めない男の登場だ。彼は何もしゃべらず、ただ、優しい視線でじっと私を見つめてくれる。私のすべてを受け入れてくれているようだ。それもそのはず、男は調査対象の人妻に恋をしてしまったのだ。
昔観た記憶とラストが違っていた。これは僕の勝手な勘違いだが、あの時代の倫理感ならそうならざるをえまい。今リメイクされたら、きっと結末は変わったことだろう。これは結婚生活という航海の途中で座礁していたひと組のカップルに、横恋慕を抱いた食いしん坊のおじさんキューピッドが本当の恋心を教えてくれた、ちょっと切ない愛の再生物語だった。
自慢はできないが、僕も好きな女性の後をつけたり、待ち伏せしたりした経験がある。偶然を演出して、出会いのきっかけを作ろうとしたのだ。そのときは、ただ遠くから見詰めているだけで、切なくて、そして幸せな気持ちだったと思う。そして、デートできたら、とにかく相手の喜びそうなことを考えたり、彼女の好きな場所にはなんとしても連れていきたいと努力したものだ。しかし、結婚して時が流れると…、一体自分の気持ちの何が変化するというのだろうか。
黙って後を追う。彼女が見て美しいと思うものを自分も感じ、彼女がやって楽しいと思えることを自分も体験してみる。ある程度距離があるから、冷静にお互いの関係を見つめ直せる。さて、僕も一日仕事を休んで、かみさんの後をつけてみるか。とんでもない現場を目撃してしまったら、どうしよう。