フォート・ブロックの決斗

ふぉーとぶろっくのけっとう|These Thousand Hills|----

フォート・ブロックの決斗

レビューの数

12

平均評点

59.4(41人)

観たひと

60

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 西部劇
製作国 アメリカ
製作年 1958
公開年月日 1959/5/16
上映時間 0分
製作会社 20世紀フォックス映画
配給 20世紀フォックス
レイティング
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ピュリッツァ賞作家A・B・ガスリー・ジュニアの原作を「ヴァイキング」のリチャード・フライシャー監督が映画化した西部劇。脚色は「夜を逃れて」のアルフレッド・ヘイスがあたり、撮影を「黒船」のチャールズ・G・クラークが受けもっている。音楽はリー・ハーライン。出演するのは、「向う見ずの男」のドン・マレイ、「追撃機」のリチャード・イーガン、「群集の中の一つの顔」リー・レミック、「サヨナラ」のパトリシア・オウエンス、スチュアート・ホイットマン、アルバート・デッカー、ハロルド・J・ストーンら。製作デイヴィッド・ワイスバート。主題歌“果てしなき山々”をネッド・ワシントンが作詞、ハリー・ウォレンが作曲している。デラックスカラー・シネマスコープ。1958年作品。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

希望に燃えるラット(ドン・マレイ)は、貧しい父の小牧場を離れて、ラムの率いる家畜輸送隊に加わりフォート・ブロックに向かった。ラットは牧童のトムと仲良しになった。フォート・ブロックについて一行が祝杯を上げていると、土地の顔役イエフ(リチャード・イーガン)が現われた。イエフは彼の持ち馬と競争する者はいないかといった。ラットは愛馬シュガーに乗り、インディアンのランニング・スターと競った。ゴール寸前でラットは見事にランニング・スターを抜いて勝った。その夜の祝賀会で、ラットはキャリー(リー・レミック)を知った。その冬、ラットはトムと狼狩をした。ある日突然ランニング・スターが現われ、ラットに重傷を負わせた。ラットはキャリーの看護で回復した。2人の仲は親密になった。キャリーはイエフの女で、これを知ったイエフは怒った。ラットは牧場経営の金を、コンラッドの銀行に借りにいったが断られた。そこで、彼はコンラッドの姪ジョイス(パトリシア・オウエンス)に会った。ラットはキャリーの援助を受けて牧場を買った。その年の冬はきびしい寒さで、牧場の被害が続出した。ラットの牧場は準備が完全だったので被害はなく、これが縁で町の有力者となった。トムとジェンの結婚にラットが反対して2人は絶交した。ラットはジョイスと結婚した。馬泥棒が牧場を荒した。イエフやラットは逮捕に向かった。山小屋に隠れていた馬泥棒たちの中に、行方不明になっていたトムがいた。トムはイエフに捕まり、吊し刑にされることになった。トムは約束が違うと反対した。キャリーはイエフにトムのことで殴られた。ラットはこれを知って旧恩を思い出し、、イエフと対決した。イエフはラットのスキをみて銃に手をかけた。その時、キャリーはイエフを射った。ラットはキャリーの弁護に努力した。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1959年6月上旬号

外国映画紹介:フォート・ブロックの決斗

1959年5月下旬号

新作グラビア:フォート・ブロックの決斗

2023/05/08

2023/05/08

65点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


ガン無しの決闘

西部劇なのにガンを用いた決闘がない。“決斗”と書くのはそのせいか(正確には決斗は決闘の略字だから意味は同じ)。
牧場主になるため金を稼ぎたい若者ラット(ドン・マレイ)は馬が縁でトム(スチュアート・ホイットマン)と仲良しになり、冬の狼狩りに行く、そこでインディアンに撃たれるがトムのおかげで命拾いする。
ラットはキャリー(リー・レミック)と恋仲になるが、キャリーは土地の顔役イエフ(リチャード・イーガン)の女だった。牧場を買う金を銀行が貸してくれない時にキャリーは助けてくれる。牧場経営が軌道に乗ってくると銀行家の姪ジョイス(パトリシア・オウエンス)と知り合い、結局はキャリーを捨て、ジョイスと結婚する。
そして馬泥棒の件でイエフに裏切られ、トムを縛り首にされてしまう、敵をとるためにイエフと殴り合いの決闘になる。イエフはライフルを持ち出してラットを撃とうとするそのとき・・・。
とまあラットはガンを使わない。どちらかと言えば実業家肌のインテリである。キャリーとジョイスを天秤にかけ、ジョイスを選ぶようなしたたかさを見せるが、根は正直でいい男だ。西部開拓時代としては上々の男ではないだろうか。

2022/10/21

2022/11/15

60点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


ワイオミング西部劇はワケあり。

ネタバレ

エンターテイメント映画を幅広く撮ったリチャード・フライシャー監督の西部劇。原作小説があるようで、
「シェーン」を脚色したA・B・ガスリー・Jrのもの。「シェーン」もワイオミング州を舞台にしたもので、
牧畜業者と開拓農民の争いが背景にある。ポイントは「ジョンソン郡戦争」で、家畜用の放牧地の争いで、
西部劇に大きな影響を与えた。この映画にも「牛泥棒」をリンチ殺人するシーンがある。

主人公ラット(ドン・マレー)は野心に燃える若者だった。父親の経済的失敗に懲り、自分の牧場を
持つために、まずは荒馬を乗りこなしてアピール。牧場主のイエフが手がける荒馬のマッチ・レースにも
勝ち、一目置かれる若者になった。勝利の祝杯を上げた酒場で娼婦のキャリー(リー・レミック)と知り合い、
深い関係になる。牧場仲間のトムと狼の毛皮獲りなど、金になれば何でも手を出す。しかし町の銀行では
借入れが出来なかった。その難関を救ったのがキャリーだった。イエフの女でもある彼女は、けっこうな
金を持っていた。それを資金にラットは牧場を買ったのだ。
トムもまた自立への道を歩む。キャリーの先輩のジェーンと結婚するという。トムは、てっきりラットが
祝福してくれるものと思っていたが、彼の口からでは言葉は、娼婦と結婚するなんて、だった。二人は
絶交する。ラットはハナからキャリーを結婚相手とは考えていなかった。けっこうな打算的な性格。
そこを有力者にコンラッドに気に入れられ、娘のジョイスと結婚することになる。

とんとん拍子にラットは出世し、州の上院議員選挙に出馬するほどになる。しっかり町の有力者となった
のだ。一方、イエフは牛泥棒のアジトを襲い、犯人を捕まえよう、とラットを誘う。ラットはきちんと保安官に
渡すことを条件に同行する。しかしイエフら過激な牧場主らは、相手を見つけると、ライフル銃で狙い撃ち。
イエフは投降した牛泥棒を吊す暴挙。約束が違う、とラットは憤るが、イエフは腰の銃を抜いた。しかし
銃声は、そのイエフに狙いを定めていたキャリーの銃からだった。イエフの暴力で、腫れ上がった顔の
キャリーを見て、ラットは再びの恩義に、彼女の裁判では懸命に弁護をすることを決意するのだった。
異色の西部劇となった。やはり決闘の出来がイマイチで、凡作か。

2022/10/15

2022/10/16

65点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


赤狩り批判映画かな?これも

『シェーン』(1953)の脚本家であるA・B・ガスリー・ジュニアが、
1956年に発表した小説"These Thousand Hills"の映画化。

牧場を破産させた父親のようにはならないと誓って、
カウボーイとしてモンタナにやって来たラット(ドン・マレー)が
牧場を成功させて上院議員候補になり、希望通りになった筈が、
間違った生き方をしたと思うようになる。

「決斗」の文字を邦題を付けられた西部劇(原題は原作と同じ「これらの千の山々」)なので、
クライマックスは撃ち合いかと思いきや
実際は素手で殴り合い。

全体的なストーリーも、
西部劇というよりは「起業家の成功と挫折物語」みたいな感じ。

アクション的には、
冒頭の暴れ馬を乗りこなそうとするシーンや、
賭け競馬で「くら」なしの裸馬で疾走するシーンなどは凄かったが、
全体的にはアクションの度合いは少なめ。

主人公の成功の道筋が、
政治や有力者などの権力の側にすり寄っていき、
代わりにパートナーのトム(スチュアート・ホイットマン)や、
恋愛関係にあったキャリー(リー・レミックが演じた彼女は、トムの恋人の同僚なので、娼婦もしくは悪役イエフの愛人だと思う)
ら、本当に親しく助け合った人たちと関係を断つことを伴っていて、
それが間違っていたと省みるのは、
ひょっとして「権力に屈して仲間を裏切った」赤狩りの事を描いているのだろうか?

この作品が赤狩りと関係しているかは、
調べても見つけることはできなかったが、
仮に無関係だったとしても、
普遍的な人間の心の弱さや陥りがちな過ちを、きっちり描いた作品だと思う。

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全体的な感想を一言で言えば「地味だけど、良く出来ていた作品」だった。

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作品について調べる過程でIMDbを見たら
「リー・レミックは『最も嫌いな出演作』と語った」とのことで、
ちょっとビックリ。

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【基本情報の追加】

上映時間は、NHK放映版の実測もIMDbの記載も、共に96分

2022/10/14

2022/10/14

70点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


西部版『陽のあたる場所』かと思いきや

純真な、しかし野心のある貧しい若者ラットは、テキサスからワイオミング州フォート・ブロックに牛追いの一員としてやって来た。無一文のカウボーイから牧場主になり、上院議員にまで登り詰めていく。

それを可能にしたのは、牧場の資金を貸してくれるなど世話になった売春婦の恋人キャリーを捨てて、金持ち一家の娘ジョイスと結婚し、土地の上流階級に食い込んだがゆえであった。

ここまでは、西部版の『陽のあたる場所』かと思わせ、社会的成功に執着するがあまり、身を滅ぼしていく主人公の末路を描くのかと思いきや、牧童時代の友人トムが私刑で殺されたことをきっかけに主人公の初心・良心が目覚め、悪党イエフに殴られた元恋人を助けるために、衆人環視の中、イエフと泥だらけで殴り合いの決闘を演じる。

ラットに銃を向けたイエフをキャリーが撃ち殺し、これからキャリーの裁判が始まろうかというところで物語は幕を閉じる。ラストでは、妻ジョイスも、裁判でキャリーのために証言するというラットの選択に理解を示し、出世の道は自ら閉ざしてしまったが、社会的成功よりも人間として真に大切なものを取り戻した、ということでハッピーエンドである。

出演者は地味だし、邦題が誤解させる決闘ものの活劇ではないし、あまり知られていない異色の西部劇だが、画面になんとはなしに人の注意を逸らさせない力があり、なかなか見応えがある。

特にはじめの方で、ラットが荒馬を乗りこなそうとする場面での黒馬の暴れる姿がなかなか見たことがないくらいに生動していて心に残った。

このような珍品を高画質で放映してくれるNHK BSプレミアムには感謝したいが、クレジットタイトルと冒頭の牛の群れが川を渡るシーンだけが元々のシネマスコープサイズで、あとはビスタサイズにカットされての放送だったのが残念。欲を言えば、全篇シネマスコープで見たかった。

2021/12/08

2021/12/29

60点

テレビ/無料放送 
字幕


荒野とマウンティング

ある若者の出世物語にも見えるが、一抹の苦みがあり、奇妙な味わいをもっている。ラット(ドン・マレー)はある競馬レースを機に成り上がりをみせる。暴れ馬をロデオの様に無理矢理に手懐け、その野生をレースに向けるという采配の才能が彼からは感じられる。牛の群れが現れている。この牛たちを駆るための馬でもる。牛たちには所有権を示す烙印が押されていく。山があり、湖が見え、雪が積もり、溪谷もある。処女地のような西部は、しかしこうした男たちや権力によって手懐けられようとしている。
こうした荒野に見え隠れしているのは死体だけでなく、野生と暴力の象徴としてのオオカミがある。ラットは、しかしソフィスケートされていき、この地方の有力者にのし上がっていく。その過程で踏み台にされた女性性の象徴としては、キャリー(リー・レミック)が現れていた。彼女との蜜月のまま物語は展開していくのかと思いきや、ジョイス(パトリシア・オウエンス)という女が現れ、ままならない世界の葛藤にラットは揺さぶられている。
盗みや貧困、聖書や資格といった啓蒙的なモチーフも物語に寄与しつつ、土の上でのたうちまわる泥仕合によってアクションを導入し、映画らしい事の運びも見られる。シャンデリア、オルゴール、ジャックナイフといった装置や小物も西部劇らしき仕立てにはなっている。イエフ(リチャード・イーガン)は小物のようにラットの成長を邪魔している。西部の荒野に現れる亡霊のようにラットに憑き、ラットの罪意識の象徴のようにして付き纏っているかに見える。荒野に対する贖罪を映画全体を捧げることによって行っているかにも見える。それはアメリカ開拓史への皮肉的な言及として映画を機能させているということでもあった。

2021/12/19

60点

選択しない 


善良な人間が尊ばれた時代

 世話になった水商売の女性を捨てて社会的な地位もお金もあるどこぞのお嬢さんと結婚。手掛けた商売が成功し、政治家に転身して名士として人望を集める。なんだか絵にかいたようなお話しである。

 困っているときに献身的に尽くしてくれた女性を踏み台にして、成功すれば見向きもしないとは。しかし、この男、それほど薄情ではなかった。彼女が窮地に陥っているときにやっと目が覚めた。地位を捨てる覚悟で彼女を助ける。

 Do the right thing、アメリカ人がよく口にする言葉さながらのドラマが展開する。
 こういうドラマに弱い。