『シェーン』(1953)の脚本家であるA・B・ガスリー・ジュニアが、
1956年に発表した小説"These Thousand Hills"の映画化。
牧場を破産させた父親のようにはならないと誓って、
カウボーイとしてモンタナにやって来たラット(ドン・マレー)が
牧場を成功させて上院議員候補になり、希望通りになった筈が、
間違った生き方をしたと思うようになる。
「決斗」の文字を邦題を付けられた西部劇(原題は原作と同じ「これらの千の山々」)なので、
クライマックスは撃ち合いかと思いきや
実際は素手で殴り合い。
全体的なストーリーも、
西部劇というよりは「起業家の成功と挫折物語」みたいな感じ。
アクション的には、
冒頭の暴れ馬を乗りこなそうとするシーンや、
賭け競馬で「くら」なしの裸馬で疾走するシーンなどは凄かったが、
全体的にはアクションの度合いは少なめ。
主人公の成功の道筋が、
政治や有力者などの権力の側にすり寄っていき、
代わりにパートナーのトム(スチュアート・ホイットマン)や、
恋愛関係にあったキャリー(リー・レミックが演じた彼女は、トムの恋人の同僚なので、娼婦もしくは悪役イエフの愛人だと思う)
ら、本当に親しく助け合った人たちと関係を断つことを伴っていて、
それが間違っていたと省みるのは、
ひょっとして「権力に屈して仲間を裏切った」赤狩りの事を描いているのだろうか?
この作品が赤狩りと関係しているかは、
調べても見つけることはできなかったが、
仮に無関係だったとしても、
普遍的な人間の心の弱さや陥りがちな過ちを、きっちり描いた作品だと思う。
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全体的な感想を一言で言えば「地味だけど、良く出来ていた作品」だった。
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作品について調べる過程でIMDbを見たら
「リー・レミックは『最も嫌いな出演作』と語った」とのことで、
ちょっとビックリ。
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【基本情報の追加】
上映時間は、NHK放映版の実測もIMDbの記載も、共に96分