ロイヤル・ナショナル・シアターで上演された""The Audience""の舞台のライブ映像。原題は""National Theatre Live:The Audience""。
イギリス国王は毎週火曜日に首相と謁見(audience)し、国政の報告を受ける。エリザベス女王も慣例に習い、チャーチル以来、12人の首相と謁見している。本作ではヴァッキンガム1階の謁見の部屋が舞台で、スコットランドの別荘でのシーンが一度入るだけ。主に女王と首相の二人劇となって、イギリスらしいブラックユーモアに溢れた喜劇となっているが、女王がチャーチル以来、ただ一人首相官邸の晩餐に出席した記憶力抜群のウィルソンと、首相辞任直前に語らう最後の場面がしみじみする。
謁見の内容はフィクションだが、女王と首相との政治漫談には妙なリアリティがあり、首相であれ女王であれ俎板に載せて笑い飛ばす、タブーなきイギリス社会の懐の深さに改めて感心する。
登場する首相は、チャーチルの他はメージャー、ブレア、サッチャー、ブラウン、キャメロンと観客に合わせて比較的新しい。ウィルソン役のリチャード・マッケイブが上手い。
舞台演出は『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルドリー、脚本は『ブーリン家の姉妹』『フロスト×ニクソン』等のピーター・モーガン、女王役はヘレン・ミレン。
休憩とインタビューを入れて158分を会話だけで見せるが、結構楽しめる。ただ、イギリスの政治事情や王室事情がコントとなっているので、ある程度の知識があった方がbetter。