シェイクスピアなんてちゃんと読んだ記憶がなく、遠い昔に劇団四季の「リア王」は観たことがあるものの、「コリオレイナス」という作品があることも知らなかった。(チケットを買う時に、間違わずに言えるか緊張した)。
私の目当ては、今年になってからとっても気になっているトム・ヒドルストン。
しかし、劇の内容もしっかり面白かった。シェイクスピアが400年も前に、当時の英国を風刺して(といわれている)、プルタルコスの「英雄列伝」をもとにして書いた政治劇。舞台の監督がインタビューで答えていたとおり、現代にも通じている。人の心の本質は、どんなに時代が変わってもあまり変わらないのだなと改めて感心してしまった。
愚かな平民は貴族の敵だと嫌うコリオレイナスの言葉は、実は、独裁者気取りのどこかの首相や漢字を読み間違うどこかの大臣の本音ではないかと思えてしまう。もちろん、票のためとはいえ、愚民に追従を言うことを拒み追放されてしまう、とても純粋なコリオレイナスと違って、票の大切さを知っている現代の政治家たちは、「愚民」をなだめるためにしたたかに甘言を呈されまするが、時折ボロを出されるので、「愚民」の目にもお見通しでありまする。
他方、平民も、怒りに任せて傲慢なコリオレイナスを追放したはいいものの、いざコリオレイナスが軍を率いて攻めてくると聞くや、自分のせいではないと、誰かに責任を転嫁しようとする姿が痛い。
そして、あの名誉欲の塊で、息子の戦傷を誇る怖い母上。世襲議員の何人かは、あのような母上に育てられたのではないかと想像してしまう。
しかし、何と言っても、やっぱり私にとっての見所はトムヒである。役のためか「オンリー・ラバーズ・・・」の時よりもかなりがっしり。こちらも素敵だ。顔中血だらけで真っ赤かな中で光る青い瞳。そして、圧巻だったのが、怖い母上に迫られて、「憐れみの汗」が青い瞳からこぼれ落ちる場面。
音響設備の素晴らしい、新しい劇場で、臨場感たっぷり。舞台劇ならではのド迫力の演技に大興奮。生で観たら、きっと肉眼では見えなかったであろうトムヒ様の美しい「憐れみの汗」まで観ることができて大満足。
イギリスのコリオレイナスのサイトには、トムヒ様のインタビュー映像が満載であることを発見。英語が聞き取れないし、「マイティソー」を観てないので、あまり意味がわからないのだけど。
ベネ様の「フランケンシュタイン」も観とけばよかったと、ちょっと後悔。でも、トムヒ様のコリオレイナスを観ることができて幸せだ。
日本橋の劇場はインターネットでも3000円で販売していたので、ぴあで買ってよかった。