アメリカから英国ロンドンに来たばかりのアン(キャロル・リンレー)。
その日、新居のアパートに入居し、一息ついた昼下がり、保育園に預けた4歳の娘バニーを迎えに行ったところ、娘の姿がない。
調理担当の女性や保育士に訊くが、誰ひとりバニーのことなど知らないという。
ロンドン駐在記者の兄スティーブン(ケア・デュリア)に連絡をとり、するうち、スコットランド・ヤードのニューハウス警部(ローレンス・オリヴィエ)らが捜索をはじめるが、ヒステリックになったアンの言動に違和感を感じたニューハウス警部は、「はじめから娘などいないのではないか。アンのイマジナリーフレンド、イマジナリードーターなのではないか」との疑惑を抱き始める・・・
といった内容で、アンの妄想か?と思わせながら進んでいきますが、そこはそこ。
警部を演じているのがローレンス・オリヴィエなので、そんな偏見に基づく一方向からの捜査にならず、「やはり娘はいるはず・・・」と両面捜査をしていくあたりが脚本としてよくできています。
消えた娘を必死で探す母親の映画は、2000年代に入って、『フォーガットン』(2004)や『フライトプラン』(2005)と作られていますが、驚天動地の前者を上回る着地点。
双葉十三郎「ぼくの採点表」では、「映画をよく見ている観客は、途中で真相に気づくだろうが・・・」と書かれていて、これにもビックリ。
本作の着地点、まったく予想していませんでした。
で、その着地点なのだけれど、妄想癖などの異常性を備えた意外な人物が主犯格で・・・
と、ネタバレはここまでにするが、後半15分ほどの演出は、それまでの演出と打って変わって、鬼面人を嚇す的な、ちょっと異常性を帯びた感じで、それが恐ろしい。
特に、ブランコのシーンのカメラワークと編集は、かなり異常な雰囲気です。
監督のオットー・プレミンジャーは、『黄金の腕』『悲しみよこんにちは』『或る殺人』『ポギーとベス』『栄光への脱出』『野望の系列』など50~60年代に活躍した最近ではあまり顧みられることが少ない。
これを機会に、少し回顧鑑賞してみようかしらん。
ソール・バスのタイトルデザインも秀逸です。