トラヴァース夫人が頑なに「メリー・ポピンズ」の映画化を拒む、その理由を探るミステリー仕立ての構成。始めはトラヴァース夫人の偏屈さが面白いと思ったけれど、それが度を越し始めると段々とイライラしてくる。が、トラヴァース夫人が初めて笑い、楽しそうに踊る姿を観た時に、ようやく自分の気持ちが彼女に同調していたことを知る。彼女と同じように緊張していた心をほぐされた解放感、ウォルト・ディズニーのスタッフたちと同じ嬉しい気持ち、ひとつのシーンでふたつの感情を抱いたのはこれが初めて。結局、彼女は最後まで素直にはなれないけれど、そんな姿ですら愛おしいと思えるくらい、トラヴァース夫人に魅了された。これはやっぱり、エマ・トンプソンの演技が成せる技。その他では、リムジン運転手のポール・ジアマッティも良かったし、シャーマン兄弟もお気に入り。