多くの作品を世界に送り出しているウォルト・ディズニーアニメーションスタジオですが、粗製乱造とは言わないまでも、その完成度にはいくらムラがあるようです。そんな中、第53作目に当たる本作は、かなり出来の良いほうの一作と言えます。お話のモチーフはアンデルセンの「雪の女王」だそうですが、原作とはかなり内容が違っており、私はむしろ「シザー・ハンズ」と「ナルニア国物語」を連想しました。
今回、物語の主人公は二人のお姫様です。ディズニーアニメとしては初めてのWヒロインということでも話題になっています。姉のエルサと妹のアナは幼い頃、仲の良い姉妹でしたが、エルサには雪や氷を自由に操れる不思議な力がありました。ある時、その力のせいでエルサはアナに怪我をさせてしまい、心配した両親は二人を引き離して育てることにしました。日増しにエルサの力は強大になってゆき、とうとう触れるもの全てを凍らせてしまうようになります。自分でも制御のきかない魔力を恐れて、エルサ自身も部屋に閉じこもってしまいます。
長い間封印していたエルサの魔力ですが、彼女の成人の儀式の時に思わぬアクシデントが起き、彼女の正体が民衆の前に晒されてしまいます。解き放たれたエルサの魔力は、夏だった王国を一面冬に変えてしまい、悲観した彼女は雪山奥深くへと姿を消してしまうのでした。
最近のアメリカ製のアニメはほとんど全てがオールCGとなりました。その色使いは綺麗には綺麗なのですが、全体的にパステルカラーが基調で、日本のアニメーションを見慣れている目から見ると、いわゆる濁った陰の色があまりない為に、何となく絵葉書的なわざとらしさが気になっていたのですが、今回はほとんどのシーンが白を基調とした雪景色だったので、シンプルな美しさを堪能できました。
登場するキャラクターについては、その表情や身振り手振りがいかにもアメリカ人そのものでして、まぁ、生きた人間をトレースしたようにリアルなのはCGアニメの宿命なのかも知れません。ただ、ドングリまなこで子供っぽく、優雅さとは無縁な顔の造形はどうしても好きになれません。大昔のシンデレラやオーロラ姫とまでは言いませんが、せめて「美女と野獣」のベルレベルに留めて欲しいと思いました。
物語的には前向きで元気いっぱいなヒロイン大活躍という、いかにも現代風な展開は今更珍しくもないのですが、今回はもう一つ、白馬の王子様の出番がないところがミソと言えばミソかも知れず、ヒロインが土壇場でキビしい二者択一を迫られるところも印象に残りました。愛が世界を救うというテーマはそのまま、その愛の種類が色恋沙汰ではなく信頼であるところが、本作ならではの新しい視点と言えるでしょう。また、何でも凍らせてしまう孤独な女王というキャラクターは、昔であれば特に意味も持たなかったかも知れませんが、今の時代では女性の多様な生き方の一つのタイプとして、若い女性に大いに受け入れられているようです。
歌について言えば、私は日本語吹き替え版で見たのですが、演じた神田沙也加、松たか子ご両人は文句のつけようがない出来栄えで、音楽も大変美しく印象に残るものでした。アテレコは、英語と日本語の違いがあるはずなのに、歌詞と人物の口の動きがぴったりハマっているところに驚かされました。
(2014/4/27 記)