片眼は見えず、残った眼で版木をなぞるように彫刻刀を入れる棟方志功の映像は色々な形で目にしているが、今回改めてみて、まずその速さに驚かされる。おそらくは、ほとばしるその才気を具象化するのにもどかしさを感じていたからであろうと思われる。それこそスローモーションで撮影をしていれば、新しい映像を撮れたのではないかとさえ思ってしまう。
小学生の版画コンクールの応募作2万点余にすべて眼を通し、瞬時にジャッジする様子も、人知を越えたスゴ技というより、もはや神業である。
朴訥な本人の語りも味わい深く、棟方志功の人間性の一面を知る手助けとなる。1時間に満たない小品であるが中身は濃く、もっと長時間費やしても良かったと思われる。