主人公は、作家志望の妻を尊重して家族を豊かな生活を提供する成功した弁護士。愛する妻と2人の幼いこどもたちと一見仲睦まじく生活している。しかし実は夫婦仲は微妙で、主人公も本来なりたかった写真家の夢がくすぶっている。
とうとう妻が離婚を要求する置き手紙を残して家を出ると、主人公は妻の浮気相手として疑っていた隣人の写真家の家を訪れる。そして問いただすと、あっさり認め挙句の果てに妻を共有しないかと言われ、怒り心頭のあまり浮気相手を殺してしまう。
主人公は死体を自宅の保冷庫に安置し、数日思案するが、子供たちが殺人犯の子として扱われないように自分は海の事故で死んだように偽装して殺した写真家としてパリから遠く離れた地で暮らすことにする。そのため法律事務所の共同出資持分も売却して資金を確保し、ヨットで死体を海中に捨てるとともに事故で行方不明となることに成功する。ここまでの描写がかなり丁寧に描かれていて、主人公の複雑な心境と後半異国の地での生活ぶりの自然な流れが違和感なく展開する。ただ事務所の共同出資者の所長がCドヌーブなのはもっと意味があるのかと思ったが後半で出てくることもなく残念な使われ方。
後半、主人公はザクレブ(ウクライナ?)で家を借り、殺した写真家の名を語って、写真を撮って過ごす。すると村の居酒屋で偶然会った初老の男と深酒をして、泥酔した男を自宅に泊める。すると男はベオグラードの新聞の編集委員で主人公の写真の才能を評価して新聞の写真として採用するようチャンスを与える。
主人公は才能を評価されたことを喜び、新聞用に写真を提供する。それが次第に広く評価され、ギャラリーで個展を開くまでになるのだが、危うく身元がバレてしまう危険が高まる。
主人公はその地を急ぎ離れるべく南米行の貨物船に乗船させてもらう。ところが船室の外で騒がしさを確かめるべくデッキヲ見ると、密航した者をいたぶって船から海に放り出している様子を目撃してしまう。主人公は反射的にその様子を写真に撮りまくるが、気づかれてしまい、海に放り出されてしまう。
主人公と他に投げ出された男が助かる。そして隠し持っていた船での惨劇のネガを助けた男に渡して高額で買われるというところでエンデイングとなる。この最後のエピソードの描き方は急でやや肩透かしをくったようだった。
ビックピクチャーが最後のエピソードがらみの意味なら、原題の「自分の人生を行きたかった男」はまさに本作全体の主人公そのものだろう。確かに健気に頑張っている前半と生き生きと写真家として生きる後半の対比が効果的だった。しかし殺人がきっかけになるのはあまりにも皮肉だが。