たいがいの映画は最初の10分で引き込まれなければ、大体ダメなもんですが・・・
これがそうでした。たまに我慢して観てると後半とかで、おお!前半の駄目な感じはこのためであったか!という奇跡の大逆転をかます場合もあるので油断できないんですけどね。
いわゆる不条理シュチュエーション・サスペンスといったものを狙ったんでしょうけど、ただ訳が分からないのと不条理とは違います。ちょっと言葉が変ですが、ちゃんと不条理として成り立たせるにはセンスとしっかりとした演出が必要だというのがよく分かりました。
出演者にも魅力を感じませんでしたねぇ。
主人公らしきアイリスはそこそこ美人ではありますが、特別華があるわけでもなく。
悪役のランブリックもあまり品を感じさせないただのオッサンで、大金持ちの風体では全くなし。せいぜい成金オヤジというところでしょうか。
主人公にも悪役にも魅力を感じないとなると、話しそのものでかなり頑張らないと致命的です。
で、話しも全然頑張れなかったわけで。
賞金を餌に不合理なゲームを開催するのは金持ちの悪趣味な娯楽ということなんでしょうが、そもそもそこに参加せざるを得ない、参加した以上逃れられない状況作りが安直。土台となる部分なのでここが緩いと作品全体が締まらなくなってしまいます。
プレイヤーがゲームに参加する背景もアイリス以外はほぼよく分からず。
全員それぞれに極端に異なったキャラクター性を持たせてますが、それも上手く使えていません。
アイリスをランブリックに紹介する黒人医師も過去にゲームに参加した生き残りの勝者であることを匂わせ、何かを決心して屋敷に侵入、そしてあっさり射殺と、笑っちゃうくらいお前は何のために出てきたんだという尺の無駄使い。
ゲームでプレイ-やが脱落・死亡していく様子もチャチでしたねー。
恐らくは劇中でランブリックが語るように、何年も培った強固な主義主張で金のために一瞬で崩れ去るという、人間の欲深さの恐怖・悲しくも滑稽な姿を描きたかったのでしょう。極限の時に自分と他者どちらを優先するのか、とか。
こういった姿を掘り下げるのは悪趣味ではありますが、確かに面白い部分ではあります。
ただ、この掘り下げ方がとっても重要。
本来ならランブリックのセリフが肝で、彼の口八丁によって劇中の登場人物だけならず観てる側をも惑わさないといけないんでしょう。
ここが丁寧に考えられていないと本当にただの悪趣味・胸くそ悪いだけになってしまうんですよね。
今作は脚本も演出も雑で、見事に胸くそ悪いだけの作品になってました。
弟のために心身ともにボロボロになってまで勝者になったのに、その弟はゲームの間に死んでしまったというラストも含めて。
しかも冒頭で予想出来てしまったし。