冒頭の池に反射する太陽の光と、水面を打つ雨粒の描写は実写と間違えるほどの精巧さ。
やはり新海誠監督は画で魅せる。
映像だけでも一見の価値はあるが、紡ぎ出す物語も独特だ。
雨の日だけ午前中の授業をサボり、公園の池の畔で靴のデザインを描く高校生のタカオ。
同じ場所で会社に行くことが出来ずに、午前中からチョコレートをつまみに缶ビールを飲むユキノ。
雨の日だけ顔を会わすことが出来る二人の恋とも言えない不器用な関係。
どれだけ世界観が広かろうが狭かろうが、新海監督は徹底して個人の欲求や衝動に極端なフォーカスを当てているなと感じる。
正直、他の作品を見てもあまりにも個人の世界に入り込み過ぎていて、登場人物の行動に共感は出来ない。
しかしユキノの台詞にもあるが、人間は皆どこか少しずつ変わっていて、完全に他人の心を理解することは出来ないし、また自分のすべてを他人が理解出来るとも思っていない。
タカオがユキノにぶつけたい感情も、ユキノが苦しいほどに思い詰めていることも、共感は出来ないかもしれないが、自分にも同じように誰かにぶつけたかった感情、胸が張り裂けそうなほどの痛みは経験がある。
タカオが最後にユキノにぶつける感情はあまりにも激しいが、そこまで突き抜けるからこそ、共感は出来ないまでもどこか琴線に触れる部分があるのだろう。
音楽の使い方も秀逸で、秦基博の『Rain』はこの映画のために存在するようにも思われた。