「HALも木から落ちるというでしょう」
人類と地球外生命体「モノリス」をめぐるSF叙事詩。
驚愕の一言。本作から約10年後に「スターウォーズ/新たなる希望」が公開されるが、宇宙の描写は本作の方が優っているし、現代でさえここまで宇宙を描ききったSF作品はほとんど存在しないのではないだろうか。そしてディスカバリー1号をはじめとする船内の光景が素晴らしい。キューブリック監督ならではの「柔らかい発光(ミルクのようなとでも言うべきか?)」は本作でも船内の描写に使用されており、ワクワクが止まらなかった。無重力空間のカメラワークは果たしてどのように撮影したのかなど、気になって仕方がない。勿体ないことをした。あと30年早く観ていれば、宇宙工学を勉強しようという気持ちも少しは湧いたかもしれない。
「人工知能が人類を超越する」というテーマをこの時点で扱ったアーサー・C・クラークもさることながら、やはり本作が映画史上の不滅の一作になったのはキューブリック監督の映像美によるところが大きく、彼の完璧主義がなければここまでの映像化は不可能だっただろう。
原始、類人猿は道具を用いることで独自の進化を遂げた。個々の身体能力は全動物の中でも平均以下であったが、道具の組み合わせにより生物界でもトップクラスの支配力を持つようになった。地球に収まりきらず宇宙に進出した人類にとって、次なる障害は「個体であること」なのかもしれない。個体を打ち破ったとき、人類は次の段階に進むことになるだろう。これも全てはモノリスのシナリオ通りか?