この作品が購入DVDのコレクションの中にありました。1回目が、当時日本一の大きさを誇ったスクリーンのある名古屋の中日シネラマ劇場で観ました。最初から最後まで唖然としていたことを覚えています。2回目は、DVDを購入した時です。この名作が500円で手に入るとは、とチョット寂しい感じでした。そして、今回です。
ザワついた音が微かに聞こえ、黒い画面の状態がかなり長い間続き、どうしたのかなぁと思っていると、ツァラトゥストラはかく語りきが流れはじめ、地球月太陽が一直線に並んだ画面で、太陽が上ります。この冒頭の場面だけでも、監督の想像力と美術の造形力に音楽が実に上手く重なって、映画の力が漲り、圧倒されます。
「スターウォーズ」の登場で宇宙空間は戦闘の場になってしまいましたが、それより10年も前に宇宙空間そのものをこれほどリアルで描き、後世の追随を許していないのです。
音楽が美しき青きドナウに変わります。道具と武器を手に入れた人類が骨を空に投げ落ちてくると、宇宙船になっています。これほどの鮮やかな転調も、映画史に残るものでしょう。黒い板(モノリスと呼ばれるそうです)が人類の知恵を進歩させるものと仄めかされます。
木星では、コンピュータと人類の戦いです。この映画公開後に人類は月に着陸する訳ですが、アポロ計画でも自動装置だけでなく手動装置も装備され、実際手動装置が必要となり、成功したそうです。将棋の話ですが、藤井聡太8段が指した一手は、AIが3億手の中では最悪手でありながら、6億手考えると最善手になる、ということもあります。やはり、コンピュータが全てではないのです。
コンピュータに打ち勝った飛行士が、老いそして死んでいきます。ここに再び黒い板が現れ、生命の再生として、巨大なベイビーが登場します。知恵の進歩だけでなく、生と死を司る力もあることが明かされます。
このモノリスのことは私にはわかりません。が、NHKのアナザーストーリーで、キューブリックの娘さんの証言として、月から見た地球の青さに本人が驚いていた、とあります。こんな青いはずがない。規格外の想像力を持つ監督をも凌ぐほど、地球は美しいのです。そして、それはその地球に暮らす一人一人の人生も、そうなはずです。