初めて本作を観たのが18歳の時。
大ヒットした作品で、映画館まで足を運んだ。当時はファンタジーを受け入れる感受性があり、大変感動したものだ。
私が映画にハマり出したのはアメリカン・ニューシネマが終わりを告げ、「ロッキー」などのヒロイズムを感じさせる映画が復活し始めた頃。「ジョーズ」などのパニック映画も全盛であった。
SFなら、「エイリアン」「スターウォーズ」もシリーズ化されて面白かった。
「E.T.」もジャンル的にはSFに入るのでしょうが、メルヘン性の高い作品と訊かれると「E.T.」しか想い浮かびません。
それはどのジャンルでも同じである。
E.T.と少年エリオットの触れ合いの描写は正しくおとぎ話である。宇宙からやって来た、この未確認生物を守ろうとするエリオットの姿が可愛くて、スピルバーグが子供のために作った絵本のような映画である。
あの自転車が浮遊するシークエンスは、メディアの紹介で必ず出てくる名シーンです。
確かにストーリーや当時の特撮技術ではあらが見えるのは否定はしません。でも良い映画は必ず再評価されるものです。童心を思い出せる作品で、小さなお子様をお持ちの親御さんにも是非勧めたい作品の一つです。
本作の良いところはエリオットと兄妹がE.T.に命があることを認識してるところにあります。E.T.を通して、命の重さを知る生きた情緒教育に思えてならない。学校の授業でカエルの解剖をしようとする下りでは、カエルを逃がそうとした。子供に慈愛の心を教えるには最高のシーンだ。生物学的なテクニカルの部分は大人になってからも学ぶことが出来ます。しかし情緒は幼少期の体験が占める割合が多いので非常に興味深く見れました。
少年が手を切った時の傷を治すシークエンスもお気に入り、生命ある者は痛みを感じるものだ。枯れた花にも生命がある。これはE.T.が全知全能の救いの神なる存在だと暗喩してるようである。これ故に本作には癒やしの力を感じます。
E.T.が蘇生した時がハロウィンの夜と言うのも良い。元々は死者の霊が帰ってくる言い伝えの祭事だから。そのあたりの設定もしっかりしてるおとぎ話である。
それにしてもスピルバーグ監督はスゴいですね。どんなジャンルの映画を作り込める偉大な映画監督です。