マリアのお雪

まりあのおゆき|----|----

マリアのお雪

レビューの数

5

平均評点

69.7(27人)

観たひと

43

観たいひと

5

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1935
公開年月日 1935/5/30
上映時間 (10巻)
製作会社 第一映画社
配給 日本映画配給社
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督溝口健二 
脚本高島達之助 
原作川口松太郎 
撮影三木稔 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

【スタッフ&キャスト】原作:川口松太郎 脚本:高島達之助 監督:溝口健二 撮影:三木稔 出演:山田五十鈴/原駒子/中野英治/歌川絹枝/夏川大二郎

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2021/12/31

2021/12/31

83点

VOD/YouTube/レンタル/テレビ 


感動しましたー

ネタバレ

映像も良くない、音声も聞き取れないという中でしたが、西南戦争で士族たちが逃げていくということがわかってきます。いっしょに、飲み屋で働くお雪とおきんもいます。熊本の街でしょうか。

 乗合の馬車では、二人は士族たちに虐げられます。馬車が故障。皆、お腹が空いています。馬は美味しそうに草を食べ、豚は仲良くしています。御者が干し大根を食べ、士族たちにこの味はお前さんたちにはわかるまい、と嫌味を言います。出てくる時に作ったオニギリをおきんが食べ始め、士族たちは買おうとします。お雪は分け与えてしまうのです。季節は春で、桜の花びらが舞っています。自然や動物は平和なのに、人間は戦争をして、いがみ合う様が対照的で、印象的です。

 マリアとあるので、宗教が絡むと思いましたが、おきんが少しそぶりを見せますが、関係はありません。後半になると、その深い意味がわかります。

 皆が官軍に捕まっています。そのリーダーが娘を要求します。おきんが代わりに行きます。その時の啖呵が凄い。命がけで来てやったのに、恥をかかせた。続いて、お雪。ゆりの花びらを剥いたり、障子から出たり入ったり。恋心の表現です。リーダーとしては、その要求に深い意味はなく、士族を試しただけでしたが、二人にとってはこの出会いは決定的でした。

 戦闘が始まり、官軍は戦場。皆はさらに逃げます。二人は舟に乗せてもらえず、再び飲み屋に帰ってきます。ここまでの展開は、特にどうということはありません。

 しかし、そこにリーダーの男が現れて、一気にクライマックスです。おきんは、よくも恥をかかせたな、と銃を構えます。着物に銃がマッチして、その格好良さといったらありません。お雪が諄々と諭します。そのセリフの意気の良さといったらありません。山田五十鈴は、美しいですが、この時の凛とした声には惚れ惚れします。
 満月です。暗闇の中、小舟に乗った男が手を振っています。このシーンにかかる音楽の素晴らしいこと。
 その音楽がまだ続き、店の外から銃を持ったおきんが入り玄関に座り、店の中からお雪が出てきて衝立に手をかけます。一世一代の大仕事をやり遂げたような疲労が画面に滲み出て、幕となります。

 マリアに込められた、無償の愛という崇高さがいつまでも余韻として残ります。やはり、溝口の実力は、只者ではありませんでした。

2020/03/05

2020/03/06

60点

選択しない 


きらめきと仕組みは滅びずに

マリヤに見立てられたお雪が,同僚ないしは共同経営者のおときと戦災に遭い,難民として都市を脱出する際に,都市を攻撃する官軍に保護される.戦争は,西南戦争の末期のようであり,激戦地となった人吉が舞台となっているようである.
二人組の女性が戦線に翻弄されながらも,痛快にサバイバルし,両軍と絡んでいくさまが愉しい.もちろん悲劇的な様相のもとに演出された作品ではある.銃を構える女性,将校を誘惑する女性,商家を経営し財をなした家族たちへの悪態を吐く女性などの,めくるめく女性像が生き生きと,そして儚く描かれている.
逃げのびようとする馬車という密室や詰め込みをドラマに仕立ている場面も面白い.爆撃を受ける都市の様にも心が躍る.セリフを戦わせ互いの心理を吐露する場面にも,アクションの機会は秘められている.
馬や豚などの動物の登場もエキセントリックでもありながら,人間の動物性を際立たせるような仕組みが発動するきっかけにもなっている.日本の建物の建具を駆使して人物が回り込み,隠れ,また現われるという仕掛けも,舞台袖を使った舞台の応用にもみえる.シルエットや水面の反射などの光への感覚も研ぎ澄まされ,冴えた作品として不朽性を湛えていると感じられる.

2018/08/15

2018/08/16

100点

その他/ツタヤ渋谷店、VHSレンタル 


2回目の鑑賞。やはり傑作。

 溝口にとって、1作目か2作目のトーキー。

 山田五十鈴の素晴らしい台詞回しが聞けるのがありがたい。
  加えて素晴らしいセリフが目白押しだ。

 音楽は2箇所しか使われていないようだが、ここぞという使い方が素晴らしい。
 個人的には、谷口千吉の「銀嶺の果て」を思い出させるものがある。
溝口の映画は、画面に力があるから、基本、音楽に頼る必要がない。

 溝口映画では珍しい戦闘場面と特撮が見れるのも面白い。
 ローアングルの撮り方、画面の傾け方、画面の一番手前に大写しの人物を後ろ向きで入れセリフを喋らせる等、凡庸でない手法も見れ、興味がつきない。

 VHSは、ツタヤの渋谷と新宿に置いてあるが、渋谷のが傷んでいません。基本、渋谷の方が料金も安いですし。
 ネットレンタルでは、Kプラスに在庫あります。

  ps. ヒロインたちを、VHSの解説では「酌婦」(しゃくふ)と称していた。 私は、65才にして初めて聞いた言葉であった。
     
 

2018/03/30

2018/03/31

100点

その他/ツタヤ新宿歌舞伎町店、VHSレンタル 


これが「女の道」じゃないか。

 「噂の女」で溝口健二にハマった私だが、戦後の作品を見つくしていくうちに、どうにも歯がゆかった。
 100%納得出来る作品に出会えなかったのである。

 そして戦前の「残菊物語」に涙し、「愛怨峡」に感心し、「瀧の白糸」に心打たれ、溝口の真価は戦前にあるのだと悟った。

 聞けば本作はモーパッサンの「脂肪の塊」の翻案だという。
 しかしウイキペディアの「脂肪の塊」のあらすじを読むと、「マリヤのお雪」(川口松太郎の原作?)には、エピローグと呼ぶには重すぎる終章が加えられているようである。

 男と女を描いて、メロドラマとは次元の違う物語を紡ぐ。
 
 小津安二郎は1936年の「一人息子」からトーキーになった。
 「マリヤのお雪」はトーキーであるが、音楽の使い方などには素晴らしいものがあり、1935年にして完璧にトーキーをものにしている。驚くばかりだ。

 個人的には「祇園の姉妹」「浪華悲歌」より好きだ。
 山田五十鈴も、こっちがいい。

   ps. 本作の山田五十鈴を見ていて、「駅馬車」のクレア・トレヴァーを思い浮かべていた。
     ウィキペディアを読んだら、ジョン・フォードが「駅馬車は《脂肪の塊》だ。」とピーター・ボグダノヴィッチに語ったそうで、驚きましたデス。

    *公開題名、VHS題名は「マリヤのお雪」

1973/06/15

2017/01/23

70点

選択しない 


「脂肪の塊」

配給は東都映画。川口松太郎の原作はモーパッサンの「脂肪の塊」の翻案である。