都会の女

とかいのおんな|City Girl|City Girl

都会の女

レビューの数

10

平均評点

85.3(17人)

観たひと

26

観たいひと

3

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 1930
公開年月日 未公開
上映時間 90分
製作会社 フォックス映画
配給 フォックス支社輸入
レイティング 一般映画
カラー モノクロ
アスペクト比 1:2.00
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

F・W・ムルナウ氏のフォックス社に於ける最後の作品で「四人の悪魔」に次いで監督されたもの。エリオット・レスター氏作の舞台劇「泥亀」に基いて「四人の悪魔」と同じくベルトールド・フィアテル氏とマリオン・オース女史が共同脚色し、原作者レスター氏が台白を執筆した。キャメラ及びセットは共に「四人の悪魔」「河(1928)」のアーネスト・パーマー氏、ハリー・オリヴァー氏がそれぞれ担任している。発声版は前5巻が全伴奏附き後3巻が全発声となっている。主役は「幸運の星」「河(1928)」のチャールズ・ファーレル氏と「河(1928)」「四人の悪魔」のメアリー・ダンカン嬢で、助演俳優はデイヴィッド・トーレンス氏、エディス・ヨーク夫人、ドーン・オデイ嬢、マージョリー・ビーブ嬢、ディック・アレクサンダー氏等である。発声版8巻、無声版10巻。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

米国中西部のミネソタ州で手びろく農業を営んでいるタスティンは息子のレムが1人前の立派な若者になったので収穫した小麦を売りにシカゴへ遣った。タスティンは生れがスコットランドだけに大変な倹約家だったので、レムは父親の言い値で小麦が売れればいいがと心配した。所がシカゴでは小麦は安値だった。レムは思い患いながら簡易食堂に昼飯を食べに入った。彼に給仕をしたのはケートという美しいウェイトレスでレムの純樸な気質を好ましく思った。レムもケートの美貌と親切とに大いに心を惹かれた。大都会の夏はさらぬだに暑いのに食堂で終日立働いて下宿へ帰るとケートは精も根も尽き果てたような心地がした。そして昼間会ったレムが住んでいるような田舎で一生暮らしたら何んなに暢気で気が清々することだろうと思うのだった。一方小麦は下る一方で何日になったら上るか見込は立たないのでレムは決心して売ってしまい1時の汽車で田舎へ帰るのだとケートに別れに行った。併しレムは1時の汽車には乗らなかった。そして再びケートを探しに戻ったレムと同じ思いで停車場へ行ったが行違って落胆して帰って来たケートは食堂の前で逢った。ウェイトレスと結婚した、帰りが遅れるが心配するな、という倅の電報を見た父親は暗い気持ちに襲われた。姑と小さい妹のメアリーには優しく迎えられたが舅の冷やかな態度はケートの心を重くした。然し彼女は姑を助けて甲斐甲斐しく働いた。多勢の雇人達も若い美しいケートの給仕に陽気になった。雇人頭のマックは主家の嫁に道ならぬ恋慕の炎を燃やした。その夜暴風雨来の警報を受けたタスティンは刈入れの夜業を命じた。マックは1人戻って来てケートに暴行を加えようとしたのを帰って来たタスティンに見咎められるとケートが仕かけた恋だと嘘吐いて逃げた。無情な舅はそれを信じてケートを撲った。そこへ戻ったレムは憤ってマックを探しに行き格闘の末引摺って来て事実を白状させた。豪雨が沛然と降り始めた。タスティンは収穫が駄目になると呻いた。来年の春を待ちましょう、皆で一生懸命に働きましょう、とケートが健気な言葉を吐いた時、タスティンは嫁を見損なった自らの不明を詫びた。希望と幸福に一同の顔は輝いた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2021/11/20

2022/01/06

75点

購入/DVD 
字幕


男がゲスなのは都会でも田舎でも同じ

ネタバレ

本作が製作された時代は男女のカップルが出ていれば、男が主で女が従というところだろう。

だが、この映画ではタイトル通り、女が主である。物語は彼女の心情を語るものである。

主人公であるケイトは都会の男の粗雑さにうんざりしている。そんな時にミネソタ州から小麦を売りにきたタスティンと恋に落ちる。

ここで彼女が都会生活に疲れたことを強調するセットが良い。アメリカは土地が広いせいかアパートの室内の広々としているのを映画でよく見る。

だが本作ではケイトの住んでいるアパートは狭い。窓の外はすぐ近くに電車が通っていて、さらに向こうにあるネオンサインもそれほどアパートから離れていない。ネオンの点滅する光が邪魔になる。その密な状態でさほど狭くない部屋は、ケイトの閉塞感を表しているようだ。

これが結婚して夫タスティンと一緒に彼の実家に向かう。彼女の住んでいたアパートの狭さから一転、小麦畑の広々とした空間という対比が素晴らしい。ケイトの心情を狭いアパートと広い麦畑で見せるところが面白い。

だがそのケイトの未来への希望や期待はタスティンの父親によって打ち砕かれる。父親ディヴット・トーレントは都会への偏見からケイトをきらっており、初めて出会っていきなりびんたを喰らわせるほどの男。いまならクレームがくる行動。

頼みの綱のタスティンも「ケイトは自分が守る」と言っていたくせに、父親に逆らうことができない。ケイトはすっかり気落ちする。

そして都会へ戻る決意をした。それをタスティンが連れ戻しに行く。そして自分のいたらなさをわびて実家に戻るようにお願いする。そしてタスティンの父親も自分の非を認めて、ケイトに詫びるのだった。

そんなラストだけど、ここのサイトのあらすじはまったく違うな。それともたつのバージョンがあるのか?まあ、キネ旬も実際のものとは違うオチになっているのを記載しているのはままあることである。そこでここに自分が観たもののラストを記載しておく。自分のために。

2021/08/17

2021/08/17

100点

購入/DVD 
字幕


ムルナウ監督の感動作

F・W・ムルナウ監督が丁寧に描いた感動作!
若いカップルの恋愛、それを認めない頑固な父親、若い夫婦に亀裂が入りそうな危険な雰囲気……とてもドラマティックで見事な映画だった。
活動弁士&即興伴奏付きバージョンにて鑑賞。

都会のダイナーで働く美女ケイトは、田舎から小麦売りで都会に出て来た青年レムと知り合って、二人は恋におちる。ここで言う都会とはシカゴ、田舎はミネソタ。
ケイトはレムと結婚して、小麦畑で囲まれた田舎に行く。レムの母親は暖かく迎えてくれたが、父親は結婚を認めずケイトをひっぱたくなど辛くあたる。それを知ったレムは「ケイトに酷いことをする奴は僕が叩きのめす」と言っていたのだが、父親を殴ることはできなかった。こうした事が続いて、嵐のやって来そうな夜、二人の仲は決定的に危険に陥る……といった物語。

ケイトが女給をしている都会の喧騒、その後の小麦畑に囲まれた田舎での素朴な風景が対照的であり、そこで繰り広げられるドラマも起伏があって、とても面白かった。
また、弁士の語り口も上手くて、字幕が無い場面でも口上が続けられて、物語に深みが増したと思う。

91年前の映画であるが画質も綺麗であり、F・W・ムルナウ監督の傑作のひとつ。

2020/10/17

2020/10/21

75点

VOD/その他/レンタル/タブレット 


いい映画なのに…

ネタバレ

<京都国際映画祭2020><サイレント/クラシック映画> <活弁でGO! Vol.2~ムルナウの「都会の女」~>のオンライン上映作品。

今年は他の多くの映画祭同様にオンライン上映。片岡一郎さんの活弁、上屋安由美さんのピアノ演奏付き。F.Wムルナウ1930年製作のアメリカ映画で、上映機会の少ない本作、純朴な田舎の若者が作物を売りに都会に来て出会ったウェイトレスと恋仲になり結婚するが、田舎の父親は騙されていると思い込み、二人の仲を裂こうとする…というもの。嵐が迫る中でのクライマックスなど見応えがある。

しかし、活弁上映を両脇に弁士と演奏者、真ん中にスクリーンという構図で撮ると必然的にスクリーンが小さく映る。そこまでは許容範囲としても、本コンテンツではなんと弁士、演奏者がアップで映り、その間、映画の場面は映らないのだから、これを決めた人の判断力を疑った。なにしろムルナウ作品の映像ががぶつ切りにされてしまっている。多くの映画祭を主催する吉本興行は映画というものが分かっているのかと憤ったが、上映終了後に、同じ弁士と演奏者による別の機会での収録時の本作のDVDが発売されるという告知があり、どうやら映像を見たければそちらを買えという意図だったと知る。

2020/09/24

2020/09/24

-点

その他/よしもと有楽町シアター 
字幕

『都会の女』。1930年、無声。活弁、生演奏付上映。かなり画質が良い。客車は開放座席。穀物相場の開かれているシカゴ。都会のシーンはスタジオセット。広大な麦畑を走る新婚の二人、素晴らしい音楽がつく。馬20頭以上で牽引するコンバイン。ケイト(メアリー・ダンカン)の部屋は高架鉄道のすぐ脇。

2020/09/04

2020/09/07

90点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


iターン民を待ち受ける現実の全て。
親父があまりの毒親and偏見塗れで笑う。
たしかに小麦畑を走るシーンは素敵だけど、親父に見つかったら折檻されること間違いなしなので冷や冷やが勝った。
雇い主の息子の新婚の嫁を見る目として史上最低の態度を取り続ける農夫たちのキャラもめちゃくちゃ濃い。ギャオス内藤みたいな顔してる奴おった。
とにかく田舎パートが小麦の収穫シーンとか含めて良すぎる。
主人公の名前(レム)にちなんで、隣の婆さんずっとレム睡眠でいびきかきまくってておいってなった。


2020劇場鑑賞55本目

2020/08/31

90点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


ショットのサイズとコンテの美しさ

F・W・ムルナウの映画といえば、その詩情である。『サンライズ』と『タブウ』がその頂点だろう。それらの傑作と比べると本作はいかにも俗っぽい物語であるが、『サンライズ』と同様に"どこかで起こり得る男女の物語"という簡潔さがある。もし本作を都会と異なる田舎の保守的な精神を描いたものだといえば、それは『タブウ』で描かれた伝統の中にある禁忌といったような、似た物語といえるかもしれない。だが、そんな物語ではないだろう。あくまで俗っぽい男女の姿が本作のドラマである。ただ他のムルナウ作品と比べて詩的ではないという印象が残る。

純朴な田舎の青年が都会の女と結婚し、都会から田舎へ訪れるシーンは、まさにムルナウの独壇場である。仲睦まじい列車内のショットから、出発する列車を背に田舎道を歩くショット。そして小麦畑でのおいかけっこ。あんなに詩情に溢れた映像を撮れるのはムルナウだけである。『サンライズ』ではこれに劣らぬ詩情の乱れ撃ちだったが、本作で詩情溢れるのはこのシークエンスぐらいである。

印象的なのは冒頭の描写から感じられる的確なコンテとサイズの見事さだ。すべてのシーンが美しいサイズで撮られている。冒頭、列車内での素早いパンから始まり、都会に疲れた女の自室でのショットが美しい。窓外の電車も効果的だが、広いロングショットからひなびた植物を愛でるミドルショット。このコンテの美しさ。ムルナウは移動撮影だけでなくFIXの画も巧みに扱うのである。奇をてらわない的確な心情の描写に、サイレント映画の美しさの真髄を見た。素晴らしいシーンの数々に感じる古典的で普遍的な映画的美しさに感動しっぱなし。これこそ映画的、映画ならではの表現としての極致といってもいい。

正直、物語は大したことない。特に青年の父親との確執と和解には少子抜けする。青年の腑抜け加減と父親の頑固さの呆気ない結末。だが、そんな物語に文句を言うほど野暮なことはない。都会の女の心情を的確に描き抜いたことこそ大事なのだ。むしろ、呆気ない物語だからこそ女の心情だけが記憶に残る。「映画とは何か」という問いへの技術的な答えが本作にはある。決して有名なムルナウ作品ではないが映画の素晴らしさを教えてくれる最高のクラシックである。シネマヴェーラ渋谷のサイレント特集には感謝しかない。このような映画がもっと見たい。