本作の舞台は世界大戦中のポーランドです。主人公はユダヤ人の少年アレックス。ナチスによるホロコーストの魔の手から、息を潜めて逃れる一部始終を映した作品です。少年版「アンネの日記」とも言えるでしょう。アレックス役のジョーダン・キズィックの演技が秀逸。ゲシュタボと何度もニアミスがあるのですが、その緊迫感はハンパではなかったですね。
同じホロコーストものの「ライフ・イズ・ビューティフル」「戦場のピアニスト」「シンドラーのリスト」という名作たちにも見劣りしない素晴らしい作品です。
このような作品ですが、知名度がイマイチです。もっと多くの方に観てもらいたいものです。
メディアやテレビ放送なんかでも、どうでも良い作品は並んでますが、この秀作を揃えてないのは非常に残念です。
あと、ホロコーストものとして死ぬことの恐怖より生き抜くことへの希望が前面に出されてることに好感を持ちました。
誰もいなくなったユダヤ人居住区のゲットーで、食料、飲料水、生活用具を揃えて、11歳の子供なりに知恵を絞っているところが興味深いです。ジョーダン・キズィックの弱々しくも理知的な容姿もあって、少年なりの生きる力を感じました。
それが出たのがケガをしたパルチザンの男二人を救ったシークエンスです。日頃望遠鏡で覗いていたポーランド人居住区に潜入して、そこから医者を連れてくる。食糧を調達する。同じ年頃の女の子とのデートする。それらの生を謳歌する描写が素晴らしかったですね。
心細かったアレックスのサバイバルにも少しずつ光が差し込んだようでした。
ポーランド人居住区で、ゲシュタボに捕まりかけたシークエンスも忘れられません。追いかけたゲシュタボの一人がアレックスを発見するのですが、見逃しました。「性善説」を前提にしたところが児童文学的な要素も取り入れられて、ホロコースト作品として異彩を放ってます。
また「ロビンソン・クルーソー」の要素もうまく取り入れてます。主人公がこれを愛読書にして、それをバックボーンにしてる描写も秀逸です。ハムスターのスノーの存在も、孤独をまぎらわす意味では良かったと思いますね。一服の清涼剤でありました。
劇中、アレックスがウオッカを飲んで酔っ払い、父親と伯父に再会するのですが、それが叶うかは伏せておきます。
それよりもラストのテロップが衝撃的だと思いますね。
また観てみたい作品です。