アラバマ物語

あらばまものがたり|To Kill a Mockingbird|----

アラバマ物語

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レビューの数

85

平均評点

77.6(377人)

観たひと

545

観たいひと

37

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ / 社会派
製作国 アメリカ
製作年 1962
公開年月日 1963/6/8
上映時間 0分
製作会社 パクラ・マリガン・ブレンドウッド・プロ映画
配給 日本ユニヴァーサル
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ピューリッツア賞を獲得したハーパー・リーの小説『ものまね鳥を殺すには』をホートン・フートが脚色し、「九月になれば」のロバート・マリガンが監督した社会ドラマ。撮影は「ポリアンナ」のラッセル・ハーラン、音楽は「肉体のすきま風」のエルマー・バーンスタイン。出演者は「悲愁(1959)」のグレゴリー・ペック、新人少女メアリー・バーダム、新人少年フィリップ・アルフォード、ジョン・メグナ、フランク・オバートンなど。製作はアラン・J・パクラ。なおこの映画でグレゴリー・ペックは62年度アカデミー最優秀主演男優賞、脚色者のホートン・フートは最優秀脚色賞、セット美術のオリーバー・エマートは最優秀黒白美術賞を受賞した。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1932年、アメリカは不況のドン底だった。アラバマ州メイコムという小さな町に、男やもめの弁護士アティカス(グレゴリー・ペック)は住んでいた。家族は彼と幼い子供たち、息子のジェム(フィリップ・アルフォード)、娘のスカウト(メアリー・バーダム)、それに家事全体を切りもりしている家政婦の4人だった。一家は静かな幸福な日々を送っていた。近所には狂ったブー・ラドレーが父に監禁されていた。ある日、農夫ボブが、娘が黒人の作男トムに強姦されたと保安官に訴えた。判事は罪を否認するトムの弁護人に、アティカスを指名した。町の人々は黒人を弁護したらただではすまぬと、アティカスに警告した。アティカスは不正と偏見を嫌い、何よりも正義を重んじる男だった。ジェムとスカウトは、気狂いのブーを見ようとラドレー家へ忍び込んだ。しかしブーに発見され逃げ帰った。そのうちにスカウトとジェム宛ての贈物が、ラドレー家の前の木の穴に置かれるようになった。このようにして月日は過ぎていった。危害を避けるため、ほかの町の留置場に入れられていたトムはメイコムに戻された。いよいよ裁判の当日。アティカスは必死の弁護を行って被告の無罪を主張したが、陪審員は有罪と決定した。アティカスには、控訴審で判決をくつがえす自信があったが、トムが脱走してしまい殺された。トムの家族にこのことを知らせに行った帰り、アティカスはボブに会った。ボブは彼に必ず裁判の仕返しをすると言うのだった。スカウトの学校で学芸会が催された。その帰りの夜道でジェムとスカウトは、ラドレー家の附近で何者かに襲われた。そこへ突然、第2の人影が現れ、襲った男をつかまえた。襲ったのはやはりボブだった。彼は胸にナイフを刺して死んでいた。2人を助けてくれたのは、ブー・ラドレーだった。ブーの行動は明らかに正当防衛だった。スカウトはブーを連れてきてジェムに合わせ、それから白髪の彼をもとの隠れ場所へと送っていった。ふたたびアティカス一家の平和な生活が始まった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1963年7月上旬創刊45周年記念特別号

外国映画批評:アラバマ物語

外国映画紹介:アラバマ物語

1963年6月上旬号

新作グラビア:アラバマ物語

旬報試写室:アラバマ物語

2024/04/17

2024/04/17

80点

選択しない 


グレゴリー・ペックが好演

人種差別の根強いアメリカの南部アラバマ州で冤罪の黒人の弁護人を務めるグレゴリー・ペックの真摯な態度が感動的でまさに適役にして好演。結局、裁判では負けるがペックの健闘を讃え二階傍聴席の黒人達が敬意を示す場面が実に良い。この重たいドラマを子どもの目線で描いているのが救い。若きロバート・デュバル扮する心優しい精薄児のブーの存在も、このドラマの一つの肝で、子ども達を助ける役割と共に案外、何人にも偏見を持たない孤高の存在かもしれない。

2024/02/08

2024/02/08

80点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


大人から見ると、子供の好奇心は時に羨ましく時に鬱陶しくなる。純粋な疑問こそ大人になるにつれて失っていく”何か”。1930年代南北戦争でなくなったはずの黒人に対する差別が残る田舎町。今なお続く差別意識。単一人種の国にいるせいか?差別される側に近い有色人種のせいなのか・・・いわれのない差別の心がいまだに理解しきれない。

2024/02/08

2024/02/08

86点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


また観た

初見が2017年だから、公開されてからずいぶん経ってから。それ以来機会があれば観ている。グレゴリー・ペックの弁護士が素晴らしい。まるでその人がそこにいるという感じ。アメリカの良心を体現した演技。決してハッピーエンドじゃないけれど。

2023/12/01

2024/01/26

80点

選択しない 


本当の悪とは

ネタバレ

 人種差別の愚かさ、醜悪さを描いた映画として有名な作品だけど映画の構成の方も一風変わっている。人種差別をストレートに描くのではなく子供たちの視点で捉えているところがユニーク。もっともそのせいで初めて観たときは子供たちの他愛もない遊びの様子が延々とスケッチされる展開に飽きてしまい途中で見るのをやめてしまった記憶があるのだが。
 その前半で子供たちの話題になっている隣家の謎の巨人(?)ブーの存在が後半の展開のキーになっていてこれも伏線だったのだとあとあとわかるのだけど。
 30年代のそれも南部での事件。黒人=悪と決めつけられる風潮の中で起きた婦女暴行事件が大人たちのパートである。
犯人と名指しされた黒人を弁護することが当時どれだけ風当たりの強いことだったかがしっかりと描かれている。この辺の南部事情は後年の「夜の大捜査線」などにも引き継がれていると思う。
 大人たちのエピソードと子供たちのエピソードを均等に割り振って見せたことでやや散漫さと思い出語りスタイルによるノスタルジックな甘さが感じられる一方、白人の子らが事件をどう受け止め、どう未来に繋いでいくのか・・・というかすかな希望を感じさせる後味になっている。
 事件自体は悲劇的な結末を迎えることになるのだけれどそんな希望を感じさせるところが救いだろうか。ブーのエピソードは子供たちにとっては人を見かけだけで判断してはいけないという大きな教訓となったはずだ。

2023/08/05

2023/08/05

70点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


その狭い穴から

1日は24時間以上であるとされる.お金がない人々が住む,何もない町として紹介され,昼夜を問わず,キャメラはこの町の悲喜こもごもを追い続ける.
吊されたタイヤで遊ぶスカウト(メアリー・バーダム )がいる.ツリーハウスから見下ろすジェム(フィリップ・アルフォード)がいる,彼女と彼の元にやってくるディル(ジョン・メグナ)がいる.少女や少年たちは,木の上か,タイヤという眼鏡から,この町を俯瞰し,のぞき,観察をしている.この町の持っている時間は,男たちによって計られているようである.懐中時計をスカウトに見せびらかすアティカス(グレゴリー・ペック)は,弁護士でもあり,何でもうまく説明ができることを得意にしていると子どもたちには思われている.こうした男たちのあるいは白人たちの時間と関わりがないせいか妻のキャルはそれほど画面に登場するわけではない.
時計を見ると,午後8時30分であることが告げられる.この町に問題の起こった8月21日をめぐって,法廷では深刻なやり取りがなされている.二階席の黒人たちが詰めており,その中には法廷を俯瞰的に見下ろす子どもたちの視線も織り込まれている.メイエラ(コリン・ウィルコックス)のレイプ事件で容疑者はトム(ブロック・ピータース)として訴えられており,それをアティカスが弁護している.メイエラの父(ジェームズ・アンダーソン)は読み書きはできる.トムは左手は使えない.しかしアティカスによれば,極貧と無知の犠牲者として罪の中にあるとされる原告のメイエラは法廷で喚き始める.被告のトムは汗をかき,自らの真実について言い淀んでいる.陪審員の前で熱弁を振るうアティカスと同じフレームに陪審員たちは入っていない.彼は誰に向かって訴えかけているのだろうか.
スカウトはワンピースを着ることをとても嫌がっていて,学校で男まさりの喧嘩を繰り返す.喧嘩の原因は父アティカスの黒人弁護にもある.スカウトやジェムの成長に影響を及ぼすのは白人の隣人とも言える黒人ばかりではない,アティカスら一家の隣人でラドレーさんが忍び寄る者たちに銃をぶっ放す.そのラドレー家には,ブーという怪人がいる.彼は物陰に佇みつつも守護霊のように終盤に見え,そして隠れる.リスとウサギを食べている家があって,狂犬病の犬が路上で狂っていて,アティカスは眼鏡を外し,銃で撃ち殺してる.「黒人びいき」だとジェムの乗る車に忍び寄る男もいれば,夜の町を子どもらが走っていると,黒い車で走る大人たちもいる.こうした不穏がこの町にはあり,他者たちのこの世界において,謎のように木の穴に木彫りの人形が見つかる.ジェムはその穴から時計やナイフなど色んな物を見つけている.
10月の風が吹いている.ハロウィンでスカウトはおかしな着ぐるみを着ている そのために一つの穴によって視界が遮られるスカウトがいる.彼女はいつの間にか,あの木の穴の中の謎の小物のように,その穴からもう一つの世界,いわば外の,他者の世界をのぞき見ているのである. 

2023/07/23

2023/07/24

65点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
字幕


人種差別、黒人蔑視のテーマを扱った作品でも最近の物とはシリアスさが違う。何しろハッピーエンドではない。問題の黒人被疑者は上告をせず、白人社会の因習に絶望して、自殺的な逃亡を計り銃殺されてしまうのだから。
そもそもが、不条理な世の中を子供の視点から視て回想するという手法を採っており、善悪問題ではなく世の中の実態を描いていく。こういった経験を経た人達がいまだに差別と格差の問題で争っているのだから人間の業の深さを考えさせられる。