若い(といってもそれほど若いわけではないが)人類学教授ミハウ(ボグスワフ・リンダ)。
彼は現在、2000年前のシャーマンのミイラの発掘調査の最中だった。
ある日、ミハウが借りているアパートの一室を若い女性(イオーナ・ペトリ)が借りようとやって来た。
彼女の名はヴウォスカ。
大学の補欠試験に合格して、田舎町から出てきたのだ。
彼女が借りようとしていた部屋は、ミハウの弟(聖職に就こうとしていた)が住んでいたが、引っ越した後で空き部屋になったところだった。
部屋の内見の際、ミハウはヴウォスカ突然、犯してしまうが、ふたりはこれまで感じたことがないような生命のエネルギー
を感じてしまう。
ミハウはもとより、ヴウォスカは極度の不感症で、性の喜びなど一度も感じたことがないのだった・・・
というところからはじまる物語は、冒頭のあらすじをこのように書くとエロス満載な感じがするが、たしかにその手のシーンは多いものの映画はエロティックからはほど遠い。
なにせ監督はアンジェイ・ズラウスキー。
狂騒に満ちた錯乱劇の態で描かれる、根底には東欧の抑圧された宗教観が流れる怪奇劇。
さらに、その宗教観から派生した笑いがふんだんに盛り込まれている・・・というように解釈しないと、よくわからない。
ヴウォスカは突発的に欲情し、ミハウもその生命のエネルギーを受けることで、シャーマンのミイラが蘇る幻想めいたものを感じるようになる。
キリスト教的に抑圧された生命のエネルギーが、原始のシャマニズムによって蘇る・・・
シャーマンのミイラは、原始の生命エネルギーを現代によみがえらせる入口であり、ヴウォスカが女性シャーマンの役割を担っている。
原題の「SZAMANKA」は、女性シャーマンの意味だろうな。
ミハウは、キリスト教的禁欲から解放されるが、原始の生命エネルギーによって昇天させられてしまう。
タコに似た悪魔の性的エネルギーに侵されてしまう女性を描いた怪奇錯乱劇『ポゼッション』と対をなす作品といえるでしょう。
ヴウォスカを演じるイオーナ・ペトリは、ベアトリス・ダルに似た雰囲気で、脱ぎっぷりはいいが魅力に乏しい。
やはりイザベル・アジャーニぐらいの魅力がないと・・・と思いました。