アラン・レネ監督の作品としては分かり易い人情劇となっている。
場面の転換に雪が降るという意味は分かりかねるけど、登場人物の孤独感をあらわしているのだろうか、と思った。ともあれ、雪が降るという描写は、劇中の恋愛をファンタジックに見せるという効果はある。この映画での恋愛がめでたしめでたしで終わらずに失恋になるのはフランス映画らしいとは思うのだが、それでも雪が降るという現象は映画では幻想的なお話という風に思える。ここに出てくる登場人物のそれぞれが誰かと関係があるという筋書自体がいかにも物語的な設定であるが、それも雪が降るという描写でああ、ハートウォーミングな話になると思わせてくれる。
失恋にはなるけれど、観終わると後味が良いという通俗的な作品にしているというのが、私には意外に見えた。ヌーヴェル・バーグの監督であるアラン・レネ監督の作品は難解なものが多いのだから。それが年を取って丸くなったのか、こういう作品も撮るようになったという一例なのだろうか。
通俗的といっても、登場人物がそれぞれ誰かと関係があるが、彼らが一堂に会するという描写はないというひねりと劇中で降雪で場面転換をするという趣向を凝らしているのは、ただの娯楽映画にしないという矜持にも感じられる。私はラストは一堂に会するということで大団円になるという観ている最中に思っていたが、それはあっさり予想を外してしまった。
フランス映画というとハリウッド映画とは違って現実の社会の厳しさを見せるものというイメージがあるので、こういう映画もあるんだなあ、とよく考えたら当たり前のことなれど、この作品もそうなると思っていた。しかし、ハリウッド式のハートウォーミングなものとなれば、なんだかホッとさせた。近年はこの種の映画が減ってしまっただけになおさらである。