スケアクロウ

すけあくろう|Scarecrow|Scarecrow

スケアクロウ

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レビューの数

69

平均評点

75.4(452人)

観たひと

702

観たいひと

59

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 1973
公開年月日 1973/9/22
上映時間 112分
製作会社 ワーナー映画作品
配給 ワーナー映画
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ヒッチハイクでアメリカ大陸を横断する2人の男の友情を描く。製作はロバート・M・シャーマン、監督は「哀しみの街かど」のジェリー・シャッツバーグ、脚本はギャリー・マイケル・ホワイト、撮影はビルモス・ジグモンド、音楽はフレッド・マイロー、編集はエヴァン・ロットマンが各々担当。出演はジーン・ハックマン、アル・パチーノ、ドロシー・トリスタン、アン・ウェッジワース、リチャード・リンチ、アイリーン・ブレナン、ペニー・アレン、リチャード・ハックマンなど。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

マックス(ジーン・ハックマン)とライオン(アル・パチーノ)が出会ったのは南カリフォルニアの人里離れた道路であった。マックスは6年の懲役を終えて刑務所から出てきたばかりだった。洗車店を始めるためにピッツバーグへ向かう途中、ちょっとデンバーに立ち寄って、たったひとりの肉親である妹コリー(ドロシー・トリスタン)を訪ねてみるつもりだった。ライオンの方は、5年ぶりに船員生活の足を洗って、デトロイトに置き去りにしたままの妻アニー(ペニー・アレン)に会いに行くところだった。今年5歳になる子供がいるはずだが、男か女さえも知らなかった。その2人は知り合ったとたん気が合った。こうして2人はコンビを組み、洗車屋を始めるために旅をする事になったが、途中、まずデトロイトとデンバーでのそれぞれの用事を済ませる事に相談がまとまった。トラックや汽車を乗り継いでデンバーに着いた2人は早速コリーを訪ねたが、そこで一緒に生活していたフレンチー(アン・ウェッジワース)という女にマックスはすっかりいかれてしまい、ライオンもコリーが気に入った。意気投合した4人は、これからずっと行動を共にしようという事になった。そのためにはまずマックスがピッツバーグの銀行に預けてある金を、ライオンと一緒に引き出しにいく途中、ライオンの妻のいるデトロイトに寄ればいい。ほんのひとときの別れだけれども、お別れパーティを盛大にやろうという事になり、ドンチャン騒ぎが始まった。そのことが原因で町の連中と喧嘩になり、マックスとライオンは30日間の強制労働を課せられた。それを終えると、2人は連れ立って目的地へ急いだ。ようやくたどりついた家の前で、まず電話をしてからと彼は公衆電話へかけ込んで彼女を呼んだ。だが、なつかしさと期待にあふれる彼の気持ちは一瞬にして吹き飛ばされた。アニーは5歳になろうとする男の子の顔を見ながら、出産直前に階段から落ちたために子供が死んで生まれてこなかった事、洗礼を受けていないその子は地獄に落ちたまま永遠に天国へは行けないだろう、そして自分は間もなく再婚すると大声でまくしたてた。それがアニーの悲しい嘘である事をライオンは知る由もない。電話を切ると、ショックを隠して、わざと明るくボックスを飛び出し、表で待ち構えていたマックスに生まれた子供は男の子であった事、しかし女房はすでに再婚しているので会うわけにはいかない事などを話して聞かせた。2人の行く先はもはやピッツバーグしか残っていなかった。ライオンの様子がおかしいのにマックスが気づいたのはその時だった。公園の大きな噴水のそばで子供たちと遊んでいたライオンは、その中の1人をいきなり抱き上げると、氷のような冷たい水の中にザブザブ入って行った。あわてたマックスが、彼を水の中から連れだした。かけつけた車で病院に収容されたライオンは正気に戻るまで当分の間精神療法が必要だという医者の診断であった。その時、マックスの心が決まった。洗車屋を始めるために貯金した金をそっくりそのまま親友の治療費につぎ込もうと。もうライオンとは永久に離れまいと。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024年2月号

COMING Old Pictures 旧作紹介:「スケアクロウ」

2005年9月上旬号

DVDコレクション:第211回 「スケアクロウ」「ナイトムーブス」

1974年8月下旬号

映画批評:キートンのマイホーム/スケアクロウ

1974年2月上旬決算特別号

特別グラビア 外国映画ベスト・テン:スケアクロウ/ジョニーは戦場へ行った/ブラザー・サン、シスター・ムーン/ジャッカルの日/ポセイドン・アドベンチャー/マクベス/探偵-スルース-/激突!/L・B・ジョーンズの解放/ラストタンゴ・イン・パリ

特別グラビア 読者のベスト・テン 外国映画:ジョニーは戦場へ行った/スケアクロウ/ポセイドン・アドベンチャー/ジャッカルの日/フォロー・ミー/探偵-スルース-/ブラザー・サン、シスター・ムーン/ゲッタウェイ!/ロイ・ビーン/激突!

1973年10月上旬秋の特別号

外国映画紹介:スケアクロウ

1973年8月上旬号

グラビア:ジェリー・シャッツバーグのスケアクロウ

ワイドディスカッション 「スケアクロウ」とワーナー映画綜合研究特集:双葉十三郎×小野耕世×河原畑寧×出目昌伸×黒井和男

シナリオ:スケアクロウ

2013/05/03

2025/03/20

80点

レンタル 
字幕


歩かない一本足の案山子のロード・ムービー。

ネタバレ

カメラを使う映画表現で、人物と背景が動くロード・ムービーは最強の手法だろう。特にアメリカは広大で、
移動はつきもの。建国は西部に向かう幌馬車の物語に行き着く。アメリカ映画にロード・ムービーの秀作が
多いのは納得のできる話。

本作は映画オリジナル脚本で、対照的な二人旅を描いた。大男のマックス(ジーン・ハックマン)は6年の
刑期を終えて刑務所を出たばかり。船乗りをやめた小男のライアン(アル・パチーノ)は、カルフォルニアの
荒れ地で旅の友を求める様子。元々かんしゃく持ちのマックスは旅の友は不要、フランシスの方が旅の
不安のため強い相棒を欲しているようだ。葉巻の火を貸したことで、二人はようやく打ち解ける。マックスは
気の弱そうなライアンにライオンのあだ名をつける。
マックスはピッツバーグで洗車場を開業する計画で、ライオンを相棒に、と持ちかける。ライオンは生まれた
子供の土産を渡すためにデトロイトに寄ることを説明して、マックスの計画に乗ることになった。ただ子供は
男か女か判らないので、とリボンの飾った箱を大事そうに抱える。ちょっと事情があるような感じだったが、
元からマックスは細かいことは聞かない。
二人はマックスの妹のいるデンバーに着く。マックスは妹の友達のフレンチーと仲良くなるが、好事魔多し、
酒場で乱闘になり、二人は刑務農場へ収容されてしまう。マックスは機嫌が悪く、ライオンには顔役のライリー
が接近する。彼は倒錯した性行をライオンに強要し、トラブルに。マックスは、ボコられたライオンの敵討ち。
出所して、デトロイトが近くなるとライオンは情緒不安定に。またしても酒場で乱闘になりかけたが、へこむ
ライオンを慰めるために案山子の真似をして酒場をわかす。
デトロイトの妻は、すでにライオンの友人と再婚していた。いまさら元夫が出てきては迷惑。しかも子供は
流産してしまった、と嘘をつく。なんと洗礼も受けていない。ライオンはマックスに何事もなかったかのように
伝えるが、心は無残に破壊されてしまった…。

このロード・ムービーの特徴は、二人の結果の明暗がはっきり分かれることだ。ライオンは人間崩壊に。
自分本位だったマックスは、ライオンとの絆を最優先する人生を選択する。ピッツバーグの銀行に行くために、
列車の往復切符を買うために四苦八苦するマックスの姿がラストシーンとなる。悲劇に大きく振れたドラマに、
ユーモアを復活させた秀逸なラストシーンとなった。名作ロード・ムービーとしての地位を獲得した。

2025/03/04

86点

VOD/U-NEXT 
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カカシは美しい

ネタバレ

風が吹き荒れる荒野でマックスとフランシスが出会う冒頭のシーンが印象的だ。
刑務所を出所したばかりのマックスに、人懐っこい笑みを浮かべたフランシスが声をかける。
が、マックスは胡散臭そうに彼を一瞥し、無視を決め込む。
フランシスはそれでもマックスの気を引こうと戯ける。
やがてマックスはタバコに火をつけようとするが、ライターは燃料切れだった。
するとフランシスは最後のマッチの一本を差し出す。
こうして意気投合した二人の旅が始まる。

マックスはピッツバーグで洗車店を始めるつもりで、フランシスは5年ぶりにデトロイトに住む妻に会いに行くつもりだった。
どうやらフランシスには子供がいるようだが、男の子か女の子かも分からないらしい。
マックスはフランシスに一緒に洗車の仕事をやらないかと持ちかける。
フランシスはその申し入れを受ける。
マックスはフランシスのミドルネームのライオネルにちなんで、彼をライオンと呼ぶことにする。

何もかも正反対の二人の姿がおかしい。
マックスは巨漢で、何枚も重ね着をしているために着膨れている。
見栄っ張りなところがあり、カッとなりやすく喧嘩っ早い。
ライオンは背が低く、とてもお調子者でお喋りだ。
とてもムードメーカー的な存在ともいえるが、物語が進むにつれて、彼の中にも果てしない闇があることが分かってくる。

全体的なトーンはそこまで暗くはないものの、上手く世渡りできない者たちの物語であるために、どこか悲壮感が漂う。
マックスの妹のコリーも、マックスに熱を上げるフレンチーも、あまり生き方が器用ではない。
喧嘩っ早いマックスのせいで、ライオンはとばっちりを食らって逮捕されてしまう。
しかも自分のせいなのにマックスはライオンに八つ当たりし、彼を無視し続ける。
それでもライオンはマックスを気にかけ続ける。
人懐っこいライオンは、すぐさま囚人のリーダーのライリーと仲良くなる。
が、ライリーの目的はライオンを手籠めにすることだった。
ライリーの要求を拒否したライオンはボコボコにされてしまう。
傷ついたライオンの姿を見たマックスは、復讐のためにライリーを叩きのめす。

やがて二人は刑期を終えて出所するが、ライオンはかつての人懐っこさを失っていた。
ここからライオンとマックスの役割が逆転していく。
ライオンを笑わそうとマックスがストリップの真似事をするシーンが印象的だった。

ライオンが妻に会う前に電話をするシーンは切ない。
彼の妻アニーも決して利口な人間ではないのだろう。
本当はライオンからの電話を嬉しく思ったはずなのに、彼女は彼を拒絶してしまう。
さらに子供は流産してしまったと嘘をつく。
本当は可愛い男の子がいるのに。
その報せを聞いて思わず受話器を置いてしまうライオン。
後悔するように受話器に名前を呼びかけるアニー。
ライオンは取り繕うように「男の子だ!」と叫びながら喜びを爆発させる。
そして今更会うのは申し訳ないとプレゼントを置いたまま立ち去る。
しかし、彼の精神は限界を迎えていたことが分かる。

同じアメリカンニューシネマの『俺たちに明日はない』や『イージーライダー』に比べれば、後味の悪い結末ではない。
短気ではあるものの、漢気に満ちたマックスのキャラクターに救われる部分も大きかった。
駅で靴底から紙幣を取り出す彼の飄々とした姿に小さな希望を感じた。

ライオンが語るカカシとカラスの逸話も印象的だった。

2024/02/06

2024/03/24

70点

映画館 
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静かな映画

ベトナム戦争が泥沼化して、アメリカン・ウェイが信じられなくなった心が荒廃してしまった時代にアメリカン・ニューシネマが台頭してきた。既成の制度なんぞくそくらえで、反体制的な主人公が多かった時代にこういうしみじみした作品は心に残る。

憎らしい悪党を葬り去ってスカッとするとか、気分がすっきりするとか言うんじゃないけど、こうやって静かに見るものに沁みてくる映画は良い。

演出と脚本が良いのだろうし、なによりジーン・ハックマンとアル・パシーノの好演がじんわりと観るものに人と人の繋がりがとても大事ということが伝わってくる。この時期のアル・パシーノは物凄く良い。彼の全盛期。
社会が荒廃しているときにこういうしんみりしてくるのは心に残る。今の時代には日本もこういう映画を作ってくれないだろうか。

2024/02/08

2024/03/14

79点

映画館/岐阜県/TOHOシネマズ岐阜 
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名優2人

ジーンハックマンとアルパチーノの揃い踏み。なんと贅沢な。ラストはホロリ。

2024/02/18

2024/02/18

-点

映画館/東京都/立川 CINEMA CITY/TWO 
字幕


人の心が死んでいない男、マックス

中学生の頃、淀川長治さんが解説をしていた日曜洋画劇場が初見。この時とても感動して当時のマイベストムービーとなり、ぴあで名画座にかかるのを調べては何度も劇場に足を運んだ。自分にとって確実に感動を得られるという保証があったからだろう。

何に魅かれたか?愛に友情に生き方に不器用な男たちに独特な美学を感じたんだと思う。
どちらかと言うとマックスに自分を被せて見ていたかも知れない。刑務所で臭いメシを食ってきたくらいだから人間不信になる体験があったのだろう。人を容易には信用しない、そんな周囲にトゲトゲしいマックスがライオンを唯一心許せる友人と自分が認めるようになる。「最後の一本のマッチをくれたから」。こんな何気なさをすくいとる繊細さが心のどこかにある。そしてこの時交わした友情を様々な障害も乗り越えながら深めていくさまを丁寧に丁寧に描いているところに大いに心動かされた。

強い絆で結ばれた二人の男。マックス・ミラン(マックス)とフランシス・ライオネル(ライオン)。キャラクターとしては、どちらかと言えばアル・パチーノ演じるライオンの方がわかりやすい。そして自分の懐を狙う他人に目を光らせたかと思えば缶ビールをあおって周りを気にせずゲップをする超偏屈で、粗野でそれでいて繊細なマックスを、プライベートではイリノイ大学出身、俳優業の果てには小説家にもなったインテリ、ジーン・ハックマンが演技の程を振り絞って見せる。いいではないか。感動しないわけにはいかない。

ヴィルモス・ジグモンドの撮影もたまらなくいい。だだっ広い芝の斜面の俯瞰ショット。その前を横切る街道を挟んでじっくりと二人の出会いを見せる冒頭から引き込まれる。風で飛んでいくあの根無草がいい。そして内心おそるおそるか?渋々か?苦虫を噛み潰したような態度と表情でライオンにマッチの火を借りるに至るやりとりから旅を重ねていくショット。それにあのとぼけたような劇伴が被さるオープニングは何度見てもいい。

映画におけるエンターテインメント性が極端に肥大化した現代からするとこの作品などは小品なのだろう。しかし当時にしてみると小品には変わらないがこれは実に贅沢なキャスティングだった。久しぶりにスクリーンで観賞してしみじみと「昔はいい映画があったな」と懐かしく当時を振り返る時間が持てたことに感謝の気持ちを捧げたい。

2024/02/18

2024/02/18

76点

映画館/東京都/TOHOシネマズ日本橋 


午前10時の映画祭13にて鑑賞

やはりスクリーンで見るのはよい。アル・パチーノもジーン・ハックマンも若く、まさにこれからのタイミングの輝いている時期を切り取った、外せない作品。実は音楽も抒情に溢れて素晴らしい。