細かなエピソードが盛りだくさんで、前半はストーリーを追うのに少し苦労しました。霧の中を行くような物語展開。そして、概して静かに進む物語の中で、徐々に霧が晴れ、いろいろな階層の人々の行動と思惑が交錯し、我々の家であるミラノを形作っていく。そんな映画です。後半の展開は見事で、その中で、時々俯瞰され、象徴的な場所が映し出されるミラノ。これが私たちの家、ということでした。
静かで、何がどう解決したか解らないような群像劇ですが、個々の人々の描き方がとても秀逸です。盛りだくさんの美しい一つ一つのエピソードから、そのパーツが美しく嵌っていく様に、しみじみとした感興を感じました。そして、時折挿入される、ヴェルディの椿姫の旋律。あまり報いのないこの話の展開に大変マッチしていて、心に残りました。
一番の美人役は、エロディ役のラウラ・キアッティ。主役のヴァレリア・ゴリノは、ヴェネツィアで女優賞受賞の名女優兼監督。一番印象に残ったのは、この映画が唯一の出演作と思われる、クリスティナ・スキーウなんですが、エピソードが解りやすいということもありますが、五里霧中の中一番オテロとビアンカの筋が追いやすかったからでしょうか。ちょっと崩れた哀感のある演技は良かったと思います。