赤と青の色彩.緑の光.まばゆく光る服.大きな顔と目元のクロースアップなど,幻想的な視覚効果は,物語の大きな舞台が宇宙的であることを告げている.二次元のファントムゾーンは,まるで映画のスクリーンに捕らえられたキャストたちを象徴するようでありながら,劇場に虜にされた観客をも戯画化しているようにも感じられる.地球と重力の異なるクリプトン星から,ウニのようなウイルスのような物体に幽閉され,六つの銀河を超えてきてやってきた聖なる子どもは,したがって地球では規格外の人物になってしまう.
彼の規格外の歯痒さは,歴史を変えることはできない不能にもあり,すごい力を見せつけることができない苦悩にもある.丘の上の墓場へと育ての親の一人ジョナサン(グレン・フォード)が埋葬されると物語は動き出し,彼,赤いシャツの少年クラーク・ケント(ジェフ・イースト)の驚きの能力は解放されようとしている.蹴る,走る,跳ぶ,バロンという犬も驚いているようでもある.しかし,彼の内気で孤独な精神を象徴するかのように,地球の最果てのような立地に,「クリスタル」ともされる氷でできた宮殿のような「砦」が建設される.彼はそこで青いタイツと赤いマントという珍妙な衣装を手に入れている.
眼鏡の男もまたケント(クリストファー・リーヴ)である.成人したケントは,カメラマンも周りにうろつく新聞記者になっている.新聞社社会面の先輩記者ロイス(マーゴット・キダー)がヒロインなのだろう,超人に変身したケントは,彼女をエクスタシー体験へと導いている.ヘリコプターの事故があり,ロイスは高所から悲鳴をあげる.スーパーマンは彼女を救出し,そうした救出劇の観客でもある野次馬たちは,ビルの屋上とスーパーマンを見上げる.その見上げには不自然な観賞の姿勢があり,天体を肉眼で観測しているかの可笑しさがある.スーパーマンの所業の先に,規格外のクリプトン星が眼差されているとも言える.超人が地球にいる理由が問題になりそうになる.それでもピーターパンとの比較がなされながら,ロイスとスーパーマンは,手を携え,ともに空を飛び,都市を上空から眺める.そして落下し,少女に戻るロイスがいる.ヒーローの超人にインタビュー取材をするロイスがいる.
こうした夢物語に水を差すのが悪の天才ルーサー(ジーン・ハックマン)ら三人組である.オーティス(ネッド・ビーティ)とテッシュマッカー(ヴァレリー・ペリン)も悪夢的である.
落雷にあった大統領機を下支えして救い,ドリルのように回転しながら地球を穿孔し,遂には地球の自転とは,逆回転に周回し,地球時間を逆転させてしまうスーパーマンがいる.その荒唐無稽さは度が過ぎており,そのため全てが幻想的でまやかしのイリュージョンとしての映画が現れる.超人に弱点がないわけではない.弱点は鉛でもある.
サンアンドレアス断層を示しながら,心に断層があることが告げられる.地震と地割れは動揺の予感を孕み,ダムを決壊させる.大岩を孤独に落とすスーパーマンは,どこか悲しげな労働者あるいはシジフォスにも見え,何かの罰が与えられているかのようにも感じられる.夢心地にあることの罪,幻想してしまうことの罪,規格外の孤独が彼自身を窮地に追いやっているようにも思える.