ただの有閑マダムの不倫話を、こんなに大層に描かれても・・・。
ヒマにしていると、ろくなことはありませんね。
子育てと仕事で忙しく日々を送っていると、趣味に回す時間もないほどで、“不倫”など、考える余地もないというのが、普通の庶民です。
もちろん、配偶者以外にも、魅力的な人はいっぱいいるわけで、そんな異性に心惹かれることはあります。ありますが、たいていの場合、金も時間もないわけで、そうそう、深い仲になったりすることはありません。
この作品、ミラノに住む富豪マダム・エンマが、息子の親友と不倫関係になり、これまでの人生を擲って、新しい人生を始めるという映画です。
ダンナはいたって普通、実業家として成功もし、家庭も大事にしていて、外に愛人がいるタイプではありません。子供もそれぞれ立派に成人し、自分の人生を歩んでいます。それなのに、エンマは、不倫に走ります。
もちろん、外から見れば、何ひとつ不自由のない暮らしをしている人でも、その人なりの孤独や寂しさや、不満を抱えていることは、私にもわかります。ロシアからきたエンマは、このミラノの地で、心のうちに満たされないものをもっていたのでしょう。
それでも、私は、このエンマに共感はできません。
エンマは、決断して、このダンナと結婚し、それ以来、何十年と苦楽を共にしてきたはずです。このダンナが、まったくエンマを蔑ろにしてきたのなら仕方ありませんが、そうではないようで、とすると、エンマは、いったいこのダンナとどういう愛の関係を育んできたのでしょう。結婚とは、ふたりで、家庭を作っていく共同作業です。それを、こうも簡単に自ら、潰してしまう人に共感はできません。しかも、この不倫が原因で、愛する息子を死なすことになりますが、それでも、エンマは、男の許に走ります。もう辛くて、この家に住むことはできないでしょうが、普通なら、ひとりで生活をはじめるでしょう。
たぶん、この青年ともすぐに破局するのでしょうが、どうにも、やっぱり、ヒマがいけないのでしょう。