灼熱の魂

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灼熱の魂

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レビューの数

126

平均評点

81.3(570人)

観たひと

777

観たいひと

92

(C) 2010 Incendies inc. (a micro_scope inc. company) - TS Productions sarl. All rights reserved.

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 カナダ フランス
製作年 2010
公開年月日 2011/12/17
上映時間 131分
製作会社 micro_scope
配給 アルバトロス・フィルム
レイティング 一般映画
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 ドルビーSRD

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

レバノン出身の劇作家ワジディ・ムアワッドの原作を「渦」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。民族や宗派間の抗争、社会と人間の不寛容がもたらす血塗られた歴史を背景に、その理不尽な暴力の渦中にのみ込まれていったヒロインの魂の旅を描く。出演は「パラダイス・ナウ」のルブナ・アザバル、「みなさん、さようなら」のレミー・ジラール。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)は、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)にも心を開くことがなかった。そんなどこか普通とは違う母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去った。その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていた。遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていくのだった……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2011年12月下旬号

UPCOMING 新作紹介:「灼熱の魂」

Kinejun Select:「灼熱の魂」

REVIEW 日本映画&外国映画 公開作24作品、72本の批評:「灼熱の魂」

2024/02/23

2024/02/23

90点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


ミステリー仕立ての上手い作劇で今回も引き込まれてしまった。
多分レバノン内戦をモチーフにしているんだろうが、現在ガザで行われているイアスラエルとハマスの紛争の事を思うと余計に胸が締め付けられる。話としては出来すぎのようにも思えるが紛争で混沌とした社会では全く起きないとは言い切れないのが怖い。そんなヘビーな状況にもラストシーンでの母の愛の言葉が印象的。初期の監督作品ながらドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はやはりフェミニズムの人だった。

2024/01/12

2024/01/15

85点

VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 


印象的な眼差し

灼熱の魂

紛争の地に生まれた宿命に翻弄されながら、心折れずに生き抜いた主人公(母親)とその子供達の物語。

謎を追う双子の現在進行と、壮絶な母の過去がクロスしながらのミステリー展開が秀逸。

結末は衝撃的すぎるが、母の子に対する無情の愛を考えさせられる。
到底あり得ないフィクションながらも、違和感どころか、映画的なリアリティに高揚し余韻を残す。

ドゥニ監督が初期に、こんな骨太な劇作をしていたとは知らなかった。

これまでの作品でArrivalが特に好きだが、
この作品で絶妙に挟み込まれるプールシーンとかは、とてもドゥニ監督らしいと思う。
ショック後の双子が水に飛び込み、水中で弟の方が脚を抱えるイメージショットとか。
それと、印象的な眼差しのカット。
同じアングルで幾度となく描写されるが、出てくる度に状況が進展し、セリフが少なくても内面の心情変化が読み取れる。


それにしても、ここで描かれる中東世界。
敵とみなすと簡単に殺し、仲間と信じると、とことん助ける。同じ民族でありながら宗教対立が強固で見ていて恐ろしくなる。
母が言う「共にいることが何よりも大切」ってセリフも、この地に生きる当事者でないとわからない感覚かもしれない。

2024/01/03

2024/01/03

91点

VOD/U-NEXT 

・ドゥニ監督作品の中でも圧倒的で、次元が異なる作品 とにかく放心するような衝撃を受けました
・描かれる中東世界、描かれるドラマ、取り上げられたテーマ、すべてが重厚で濃厚で衝撃的
・具体的には明示されない中東の宗教対立からくる一般市民の苛烈な人生 主人公母の言葉にするのも苦しくなる人生が徐々に明らかになるストーリーが実に丁寧で、映画的で、結末が衝撃的 双子が母の過去を追う過程で回想的に徐々に明らかになっていく構成が映画的であり、素晴らしかった
・中東の引き裂かれる人々の描写 内戦で荒廃する街並み、対立する住民、武力による支配の恐怖、無機質な世界観 この世界の描き方としてレベルが違う この監督の映像センスはこの時代からずば抜けている
・大きく二つある衝撃の展開 双子の父が拷問人のレイプによるもの、生き別れた長男が拷問人として成長したこと あまりに不幸で強烈な展開 それでいて納得してしまう社会情勢 最後の亡き母からの手紙も併せて痛ましくも素晴らしい脚本でした

2023/12/17

2023/12/22

85点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/テレビ 
字幕


物語が進んで行き、真相が明らかになるにつれてあまりの衝撃的な展開に、段々と感情が追いつかなくなってきた。最後の方は殆ど放心状態。レバノンの内戦がモデルのようだけど、まさに今パレスチナで起こっている事は、この映画で描かれている悲劇とそれ程かけ離れていないのではとも思う。復讐の連鎖を断ち切る為にはここまでの犠牲を払わなければいけないのか、半ば絶望的な気分にもさせられる。いづれにしても愛情と憎悪と言う相反する感情を抱く人間の本質を突いたヴィルヌーヴの視点とトム・ヨークの歌声が心に刺さりまくった。

2023/12/15

2023/12/16

80点

その他/Amazon 
字幕


まさに灼熱の魂

ネタバレ

展開はサスペンス的。内戦が描かれているので、いまも世界中で同じこと、もっと酷い事が起きていると思い知る。

主人公二人の亡くなったばかりの母親は、子供達に心を開かない人だったようだが、雇用主であった公証人の大きな信頼を得て "家族同様"と言わせているところから、生前の様子をうかがい知る。続くカットバックで “変人的" になるのも当然、生きているのが不思議なほどの、彼女の過酷な経験が語られる。

最後に明らかになる、双子の父、兄の真実は観る者にショックを与える。主人公達には、自分の出生だけでも、人生を暗く照らすものだったのだが。

ところが。

彼らの父と兄、それぞれに対する、母親の遺書で、すべてが昇華する。なんという深く大きな愛だろうか。

2023/04/07

2023/04/07

88点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


ストーリー構成が素晴らしい。魂が揺さぶられた

ネタバレ

戯曲を映画化しただけに、脚本が素晴らしい。一人の女性の凄惨な人生を、彼女の双子の子供達(男と女)が母の過去を追うシーンにクロスオーバーさせて描いていきます(子供達が母の過去を調査する現代のシーンと、母が実際に行った過去の所業のシーンを交互に展開しています)。子供達は、生前の母を変人の様に思っていたのですが、母から託された遺書(父と兄を探しなさい、というお願い)を気乗りしないながらも実現しようと、母の故郷のレバノンへ行きます。そこで、これまで知らなかった母の過去を徐々に知るのですが、遂に驚愕の事実を知ってしまいます。
観客も二人と同時進行で知る事になるのですが、映画という作り話でありながら、暫し呆然となってしまうラストでした。

レバノン内戦が描かれているので、子供を平気で銃殺するシーン等が出てきます。自室で一人で観ていた私でさえ、思わず叫んでしまいました。こんな非情な世界で主人公の女性ナワル・マルワン(もともとはキリスト教信者)は内戦に巻き込まれていきます。でも、そもそも、彼女の運命を変えたのは、(恐らく)異教徒の男性の子供を宿したからです。家族からは「お前は家族の名誉を傷つけた」と非難され、生まれた子供は直ぐに何処かに連れていかれます。彼女は、伯父の下に預けられます。自分の生んだ男の子を忘れられない彼女。故郷近くの託児所が襲撃を受けたと聞き、自分の子を捜しにいきます。そこで目にした惨劇に、彼女も内戦の戦士となってしまいます。政治家を暗殺し、牢獄に入れられ、拷問士にレイプされます。そして、運命は、、、この続きは超ネタバレで書けません。

主人公ナワル・マルワンが最後に選んだのは、自分の心身に想像を絶する様な危害を加えた拷問士に対して、肉体的な復讐を与える事ではありませんでした。その男がした事が何だったのかを、彼自身の魂に強烈に響く様に伝えることでした。それを知った拷問士の表情、こわばった身体。この方法によって、彼女は「憎しみの連鎖を断つ」のでした。
では、憎しみは、どうやって生まれるのでしょうか?私には、「家族の名誉」とか「国家のために」の様な思想が生むと思います。そんなことより、個人の幸せを真剣に考えてあげたら、例えば、ナワル・マルワンが子供を産んだ時に離れ離れにされなかったら、彼女は内戦に巻き込まれる事はなかった。何が大切なのかを考えさせられました。
出演している役者は全員私が知らない方々ですが、とても良かったです。この役者陣の表情が、この作品にリアリティを与えていると感じました。母親の(恐怖を感じながらも)意を決した表情、真実を知るにつけ精神が壊れていきそうな自分を何とか堪えようとする娘の表情、拷問士が母を舐め回す様な表情。そして、冒頭の子供の怖い目。。。