たわいのないおとぎ話ですが、とにかく映像が綺麗! ちょっとアニメにご無沙汰している間に、3DとCGの技術が格段に進歩したのにびっくりしました。長い髪の少女が主人公のお話なのですが、その髪の毛がまるでシャンプーのコマーシャルに出ているような綺麗な金髪でうっとりと見とれてしまいます。久々に白人・ブロンドの伝統的プリンセスの登場です。ブロンド信仰という言葉があるかどうか知りませんが、フェチにはたまらないアニメです。
物語は悪い魔女に誘拐されたお姫様を、勇気ある青年が助けて恋に落ちるという、プリンセスストーリーの典型ですが、悪役の魔女が、単純な悪ではないところがこの映画の面白いところ。事件の発端は、元々彼女の持ち物だった永久の若さと命を生む魔法の花を、わざとではないとは言え、王室が横取りしたことから始まっているのです。そのため魔女は魔法の花の魔力を受け継いだ幼い王女を誘拐することになるのですが、この魔女、シンデレラの継母やら眠れる森の美女の魔女みたいな、一辺倒の悪ではないのですね。
自らの若さのためとは言え、彼女はそれなりにさらって来た娘に愛情を注いで育てているのです。ただし、外は危険だと言いながら高い塔に娘を閉じ込めているのは問題です。でも良く考えて見ると、これってペットに愛情を注ぐ人間とあまり大差ないかも知れないです。自らの癒しのために、家に閉じ込めて大切にする。もちろん勝手に子作りなんかできないように去勢するし、自由に外に出すこともない。だって車にひかれたりしたら大変だし…というわけで、この魔女の自分勝手な愛情は、2卵生双生児と揶揄される母と娘の密接な関係にも似ています。
そんな大事に育てた娘も、突然現れたガサツな男にいとも簡単にさらわれてしまうのです。しかも、娘は母親に反発したり、もっとひどい時には憎みさえするのです。この映画の主人公ラプンツェルも、最初はお母さん大好き少女だったけど、最後に取った行動は冷淡そのもの。もちろん誘拐犯である魔女は自業自得かもしれないけど、そこには長年育ててもらった恩義、とまでは行かないまでも、情というものが入り込む隙すらないのでしょうか?
なにはともあれ、彼女は童話の主人公ですから、今までの母娘関係に長ーい(!)後ろ髪を引かれることなんてない、単純なキャラクターになっているのです。まぁ、その辺が難しいこと考えずに楽しめる童話の良さとでも言いましょうか? 悪役はとことん報いを受け、ヒロインは幸せに暮らしましたとさ、これぞおとぎ話の大原則ですよね。聞けばディズニーにとって、本作は50周年の記念作品とか。大いなる節目にふさわしい、現代的だけど昔ながらの味わいのあるファンタジーだと思いました。
(2011/4/15 記)