トリフォーの "突然炎のごとく" やゴダールの "はなればなれに" は男二人女一人が主人公だった。同じヌーベルバークの仲間でも、その裏返しとなる男一人女二人の男女模様を描くJ・ロジェのフットワークはずっと軽い。その奔放さの度合いは後続作品 "オルエットの方へ" がより上回っているが、鬱陶しい映画の枠組みなぞはバカンスの開放感とともに小気味よいステップで乗り越えてしまうつくり手の素晴らしさはこの処女作でも充分に伝ってくる。
街を闊歩するふたりのヒロインを横移動で追いかける長廻しの乗りの良さ。TV局に勤める青年を加えて三人一緒の戯れ場面が多いなか、彼と彼女達のうちひとりがツー・ショットとなるとき、その切っ掛けを仄めかすのみで決定的なラブシーンを回避する工夫が印象に残る。それは、バカンスも終わって港での長き別離の場面に意外や深き叙情的な趣きを与えていた。