フェイクドキュメンタリー形式で始まりました。このスタイルはテンポが良くて面白いと思います。そして、そのドキュメンタリーの内容がぶっ飛んでいて凄いのでした。よくも20年間も共存できたな…という感じでした。技術が狙いという事かもしれませんが、いたずらの度が過ぎているようです。そして、その造形がグロテスクというか、甲殻類です。ちょっとおどけた甲殻類が、黒くねばねばしながら生活していて、普通に共存している世界の構築が素晴らしいというか、凄い前半戦でした。
後半に入るとSFアクションがメインになってきます。あのモビルスーツの登場はけっこう感動しました。なかなかの威力でした。そしてちょっとほろ苦いラストへと繋がります。そこもフェイクドキュメンタリー風に作られていて、味わい深い感じです。そもそもインタビューに登場する人々の発言が、ちょっとずれているようなものもあって、変わった雰囲気を出していました。子供のエビの活躍も、親子愛の中で描かれて、良かったと思います。
テーマはアパルトヘイトなのですが、アパルトヘイトとエイリアンを組み合わせるという発想から来ているのでしょう。真剣にアパルトヘイトを考えるには内容が飛び過ぎているので、ここは社会派パロディSFアクションという定義づけにしたいと思います。緩まず一気に見られる造りも素晴らしいと思いました。ヴィカスのどちらかというと周囲から敬遠されそうな調子のいい自己中の性格も、終始一貫して良かったと思いました。「第10地区」という続編執筆中という事らしいので楽しみです。