イラクの地には銃弾が飛び交うだけではなく,工夫を凝らした様々な爆弾を使って,介入している米軍を駆逐しようとしている.テロリストだけでなく,そこでは市民たちも自主的に関わっているようにも見える.爆弾処理班の男たちは,そうしたヒリヒリする現場を特殊な精神的態度で生きている.そして死んでいく.
爆弾を運んでいるラジコンがいじましくも,街の路地を走っていく.しかしその荷車が故障し,手動で爆弾を設置する羽目に陥る.処理班の班長がこの作業を防爆スーツを着用して担う.近くでは市民により携帯が使用され,設置した班長はその防護も虚しく爆死する.
戦闘機が飛ぶ.凧が舞う.街には様々な不確定な要素があり,それはノイズにもなっている.小さな動きが小さな兆候となって,判断を迷わせ,鈍らせる.そして死にいたる大きな結果をもたらす.街の動きはノイズでもあるが,味方の部隊の動きや各々の兵の挙動もノイズには違いないだろう.
リバティ基地がビクトリー基地に名前が変わると,無茶をするジェームズ(ジェレミー・レナー)が班長となってやってくる.彼は無神経であるというよりも,常に刺激的な状況に身をさらし,そのことで平静を保とうとしているようにも見える,常在戦場とでもいうべきであろうか.経験の浅いエルドリッチ(ブライアン・ジェラディ)や班長の補佐的な立場にあるサンボーン(アンソニー・マッキー)とともに作戦にあたっていく.座標3453では,モスクに仕掛けられた爆弾を処理する.タクシーが現場に突っ込んでくる.ラジコンでない車両も爆弾の運搬に使用されている.後部のトランクには爆弾がたんまり詰め込まれていることもある.防護服を脱ぎ,アシスタントをする者との通信を行うヘッドセットも捨て去り,単独で発信機の発見に臨む班長がいる.狙撃の腕を問われる現場もある.ヤギの群れの中に敵兵が紛れていることもある.基地にDVDを売りにくる少年ベッカムも疑われる.遺体と思っていた人間にも爆弾が詰め込まれ有効な攻撃を行おうとしている.そんな現場の人間の精神を保とうとセラピーする大佐先生(クリスチャン・カマルゴ)も爆死する.
酔って仲間と殴り合い,そして母国の家での平穏にいてもたってもいられずに,中毒のように現場に戻る者もいる.