ずっとあなたを愛してる

ずっとあなたをあいしてる|IL YA LONGTEMPS QUE JE TAIME|I'VE LOVED YOU SO LONG

ずっとあなたを愛してる

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レビューの数

12

平均評点

74.2(60人)

観たひと

106

観たいひと

11

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 フランス ドイツ
製作年 2008
公開年月日 2009/12/26
上映時間 117分
製作会社
配給 ロングライド
レイティング 不明
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 ドルビーSRD

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

長い空白期間を経て再会した姉妹とその周囲の人々を通して、息子を殺害したひとりの女性の愛と再生を描く。監督・脚本は『灰色の魂』などの著者であるフィリップ・クローデル。出演は「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマス、「モディリアーニ 真実の愛」のエルザ・ジルベルスタイン、「おせっかいな天使」のセルジュ・アザナヴィシウスなど。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

空港のカフェで15年の刑期を終えたジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)は、妹のレア(エルザ・ジルベルスタイン)と再会する。嬉しそうにするレアだったが、ジュリエットは戸惑い気味だ。レアはナンシーに移り住んで10年、この地で大学に就職し結婚もした。ジュリエットが当時6歳の息子に手を掛けて服役して以来、両親から姉の存在を忘れろと刷り込まれてきたレアは、失われた年月を取り戻そうと決意していた。ジュリエットはレアの家に身を寄せる。レアの夫リュック(セルジュ・アザナヴィシウス)、病気で口が利けなくなったレアの義父、そしてベトナムから迎え入れた養女の8歳のプチ・リスことクレリス(リズ・セギュ-ル)と幼いアメリア(リリー=ローズ)がいた。ジュリエットは、罪を犯した理由を裁判でも決して語らなかった。当時の夫は彼女の逮捕と同時に離婚した。ジュリエットにいつまでも理由を聞かないことで、リュックはレアを責めるが、屈託のないプチ・リスはジュリエットになついていった。そんな中、就職先を探そうと病院の秘書の面接を受けたジュリエットは、面接担当の女性から医師だった過去は伏せておくようにと伝えられる。自分がいない間、レアに忘れられていたと思い込むジュリエットに、レアは箱にしまっていた日記を見せる。そこにはジュリエットの名といなくなってからの日数が記されていた。リュックはジュリエットを信頼するようになり、娘たちの世話を頼む。ある日、ジュリエットとレアは母親(クレール・ジョンストン)のいる施設を訪れる。認知症の為、レアのことも全く覚えていない母だったが、ジュリエットを見るなり抱きしめ、「学校から帰ったの?」と語りかける。病院の正式採用が決まったジュリエットは、ひとりで住む家を探し始める。一方、レアはジュリエットの部屋で古ぼけた幼い男の子の写真とメモを発見。そこにはジュリエットの秘密を解く鍵が示されていた……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2010年1月下旬号

REVIEW 外国映画:「ずっとあなたを愛してる」

2010年1月上旬号

Kinejun Select キネマ旬報が選ぶ今号の2本:「ずっとあなたを愛してる」

2021/11/12

2021/11/12

75点

レンタル/東京都/TSUTAYA/TSUTAYA 三鷹北口店/DVD 
字幕


ヒューマンドラマ

脚本が良くできていて殺人囚の姉と迎える妹の緊張感がたまらない。徐々に過去がわかってくる見せ方は見事。タイトルから甘い恋愛物かと敬遠されそうだがなかなかの秀作。

2019/02/15

2019/02/17

80点

選択しない 


母の慟哭

ネタバレ

 映画を見終わってから振り返ってみると、主演のC・スコット・トーマスの一人芝居をずっと見せられていたような錯覚を覚えてしまう。それぐらい彼女の内面で蠢くドラマが激しく、またそれを極力表に出さないように、自分の内に抑え込んでいる様子がひしひしと伝わってくる演技なのだ。
 “長い旅行”から久しぶりに帰還したらしいジュリエット(トーマス)が、妹レアの家にしばらく居候することになる。しかしジュリエットの表情は最初から心ここにあらずといった感じで虚ろである。妹の家族との関係もぎこちない。
 母の姉だというのに子供達(ベトナムからの養子である。その訳も痛いのだが)は初対面のようである。特にレアの夫のジュリエットに対する視線の冷たさでほぼ観客にもどういう叙情なのかが飲み込めてくる。
 映画はこの曰く有りげな姉、ジュリエットの過去を伏せながら進行していくが、彼女の暗い表情や周囲の反応から、過去に悲惨なことがあったであろうことが徐々にわかってくる。映画はそのことを小出しに、まるでミステリーの謎解きのように我々に開示していく。
 彼女が長い間抑圧していた感情を爆発させるのには、ラストシーンまで待たねばならない。それまでに難病に苦しむ幼い息子を見かねて安楽死させてしまった罪への後悔とそれ以上に尽くせなかった息子への愛の深さを我々は知らされている。
 妹(エルザ・ジルベルスタイン、好演)が何故裁判で弁明しなかったのか、何故あの時私たちに相談してくれなかったのかと迫ってみても彼女にとってはもはや何の意味もなかった。
 ジュリエットが殺人罪で服役する前の仕事が医師であったという設定が効いている。医師であるが故に息子の抱えた病の重篤さや苦しみがわかってしまう。そんな医療知識がなければあるいは医師に縋ることもできたかもしれない。自分の苦しみの一部を他に預けることで逃げることができたかも。
 息子を思うあまりとは言え手にかけてしまったことに変わりはない。愛する者を失ってしまった彼女にとって弁明などに何の意味も見いだせなかったであろうことも、ラストの激情で痛切に伝わってきた。
 再就職先も決まって一人暮らしを始めるため、下見に訪れたアパートの一室で初めて妹に本心を見せたジュリエット。階下で同僚のミシェルが呼ぶ声にかろうじて反応する。微かに浮かんだ笑みに少なからず救われた。

2017/11/05

2017/11/05

-点

レンタル/千葉県 
字幕

主演のクリスティン・スコット・トーマスが柔和な表情でこちらを見つめている写真を見てジャケ借り。
6歳の息子を殺した罪で15年間服役していた姉と、出所後に彼女を迎えた妹との物語。姉に疑心暗鬼になる妹の夫、妹夫婦が養女にしたベトナム出身の娘たち、病気により言葉を発しなくなった読書好きの夫の父親、以前交通事故で妻を亡くした妹の職場仲間、出所後の姉を見守っているバツイチの刑事など、2人の周囲の人々が魅力的。ただ、その中にごく一般的な親子の形が存在しないのは、"息子殺し"を強調したかったからなのか? 1枚ベールを纏いつつも、次第にこれらの人々の日常に溶け込んでいく姉を、クリスティン・スコット・トーマスが淡々と演じている。
ラストがもう少しドラマチックになるかと期待したが、割りと"淡々"のまま、激痛に苦しむ難病の息子を楽にするための殺人であったことが明かされていく。
ラスト・シーンで、訪問者に対して「私はここにいるわ」と答える姉。自分の居場所を見つけたことを知らせたかったのだろう。

2017/08/17

80点

選択しない 


明けない夜はなし!

15年間の刑期を終えて出所した女性の話です。これだけの長い刑期ですから、罪名は殺人と察しがつきます。

本作の主人公ジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)の重く沈んだ表情から、今も癒えない十字架を背負っていることが分かります。自分の殻に閉じ籠ってるようで、それが凄く痛々しく見えました。

刑務所から出所後は妹レアの家に身を寄せるのですが、レアの家族も複雑であります。
レア夫婦はわざと子供を作らずにベトナム人の子供を養子に迎えたようです。夫の父親は言葉をしゃべれなくなってますし、決して明るいものではありません。それでもレアはジュリエットを気遣うのですが、気持ちの距離が縮まるわけでなく、もどかしいばかりでした。
個人的には、もう少しジュリエットも心を開くべきだとも思いましたよ。
しかし、ストーリーが進む毎に真実が明らかにされるとジュリエットが如何に苦しんでるか分かるようになりました。

理由は分かりませんが、ジュリエットは自分の子供を殺めたようです。この罪悪感故に、心を闇に支配されてたのですね…。誰にも救いを求めない頑なさも理解できます。
人の苦しみは、本人にしか分からないものだと思います。本作は人の「孤独」を重いテーマを用いて表現したものだと思います。
どんな慰めも慰めにならない時もあります。それほど人が立ち直ることは難しいのでしょう。

ラストでジュリエットが我が子を殺めた理由が明らかになります。本作の良い点は、ラストを観た瞬間にジュリエットの今までの心情がクリアになるところです。そこに至るまで、周囲の人々がジュリエットを見守っていた優しさも伝わります。

人生には不幸なこともあるでしょう。でも支えてくれる人がいれば、時が経てば夜が明けると感じさせてくれる作品です。

全く娯楽性のないフランス映画です。確かに万人受けはしないでしょうが、私にはハッと思わせてくれる良作でした。

2010/03/21

2015/09/08

78点

映画館/群馬県/シネマテーク高崎 
字幕


罪と罰と償いと再生と

何もない世界のはずだった。
大切なものを失ったこの世界。
犯した罪
法による罰を受けたといっても、失ったものは返ってこない。
ただただ償いの日々だけが待っているはずだった。
妹と再会し、多くの人々との交流を経て尚、彼女の心は晴れない。
その心の奥底に眠る罪と償いの気持ち。

その閉ざされた心。

彼女の閉ざした心に眠る思い。

それは深い愛情。
愛ゆえにわが子を手にかけ、愛ゆえに苦悩する。

その痛み
その思い
その心に宿る罪と罰

その思いを吐き出した時
本当の償いが始まる。
本当の再生が始まる。

流した涙が少しずつ心を解きほぐしていくはず。


ヒロインの悲しみの深さと愛情の深さが最後の最後にドッと押し寄せてくる作品でした。
その心の痛みに感動する作品でした。
わが子を殺めた姉
わが子を養子とした妹
その姉妹の心彷徨う姿。
そして彼女たちの友人たちや隣人たちの心模様までもが丁寧に…
静かに、静かに描かれる素敵な作品でした。

2009/12/27

2015/04/15

65点

映画館/東京都 


ひとそれぞれの無明

15年服役した女性、ジュリエット。
理由があって自分の息子を手にかけた。
出所後、妹に迎えられ、妹夫妻の家へ。
だれもが何かの闇を抱えており、そんな周囲に少しずつ心を溶かして、ジュリエットが再生する・・・

そう伝えればよいのだろう、この映画。

判り易い映画ではない。
淡々と物語(というよりも出来事)が綴られていくから。

ここいらあたりは、小説家である監督のフィリップ・クローデルが目指したところだろう。

興味深いのはジュリエットを取り囲むひとびとにもなんらかの闇を抱えていること。

大学で文学を教える妹のレアは、刑が決まった後、姉の存在をないものとしてきた。
ジュリエットが定期的に会わなければならない監察官のフォレ警部は、離婚し、絶望の淵におり、大河オリノコ川を見ることだけが心の支え。
レアの同僚で、ジュリエットが心を開いていく男性ミシェルは、刑務所の教師を勤めて、自分と囚人たちの差は紙一重だと気づく。
また、レア夫婦の友人であるイラン人医師は、フランスでの伴侶との間に子供は生まれるが、本国では戦火で家族を失った。

ジュリエットとレアの母親はアルツハイマーで、レアのことなどまったく覚えていない。
突然、お見舞いに現れたジュリエットの姿をみて、過去をイッキに、ただし一瞬のみ、甦る。

そんな中で、闇を抱えていないようにみえるのは、レア夫婦のベトナム人養女のプチ・リス。
元気一杯、こわいことなんてないさ。
でもでも、養女になるくらいなんだから、彼女がしらないところでは、たくさんの闇があるのかもしれない。

終盤のクライマックスの直前、ジュリエットがわが子を手にかけた理由をそこはかとなく示すシーン、
イラン人医師からの電話をレアが受けるシーンで、プチ・リスが童話を朗読しているのが印象的だ。

「王子さまは森へ入っていきます。
 森は真っ暗だから、そこではオオカミもイヌも区別が付きません。
 王子さまが恐れるのは暗闇だけなのです・・・・」

ひとそれぞれの無明。

ジュリエットは再生します。
でも、そのほかのひとびとも闇を拓きながら、日々再生しているのかもしれません。

どちらかというと、映画で観るよりも、じっくりと本で読みたい類の内容でした。