『死刑執行人もまた死す』
(Hangmen Also Die! )
Arnold Productions
ユナイト
USA
1943
(Amazonプライム・ビデオ)
「ナチス・ドイツ占領下のチェコ(ベーメン・メーレン保護領)で1942年に実際に起きた、ナチス・ドイツのベーメン・メーレン副総督、ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件「エンスラポイド作戦」から着想を得ており、反ナチ・レジスタンス映画の屈指の傑作とされる」(Wikipedia)
「5時半か。きっかり30分後に最初の人質40人を処刑する。お父上は含まれていない。今朝はな」
「時は来た愛国者よ。行動の時だ。
燃やした心の炎
次の者に渡せ
炎を燃やし続けろ
道はまっすぐ伸びている。
命をかけるんだ。
決して降伏はしない(No Surrender)」
「残念だがゲシュタポの犬は引退できないのさ」
「息子よ。これから言うことを大人になったら思い出せ。
その頃は侵略者を追い出して、かなりの年月が経っている。そこは自由の国で民衆が自ら統治している。素晴らしい時代だ。老若男女問わず、国民の全員が食料に困らず、自由に書物を読み考え、そして語り合える時代だ。しかし忘れてはならない。自由とはモノのように所有できるものではなく、カネでは買えない。自由は勝ち取るものだ。私を思い出す時は、父親としてではなく、自由のために戦って死んだ男だと思え」
ナチスの幹部ハイドリヒ副総督が亡命チェコ政府と英国情報部によって送り込まれたチェコ人レジスタンス二人によって暗殺されたのは1942年5月27日。
この映画がアメリカで公開されたのは1943年3月23日。暗殺事件から約一年で製作公開された。そして公開された時、まだ連合軍とナチス・ドイツとの戦争は終わっていなかった。
だからエンドタイトルは「NOT THE END」となっている。
まだ戦争が続いている状態で製作された熱気が伝わってくる。
映画の中の暗殺犯は外科医。1人で襲撃して拳銃で暗殺した。(暗殺場面は描かれない)
レジスタンスの助けを借りてゲシュタポの追跡から逃れる。ナチスはチェコ人を問答無用で逮捕し人質にする。暗殺犯が自首してこなければ人質を毎日処刑すると発表する。(史実では1万3千人が処刑された)
映画ではレジスタンス達はゲシュタポに対抗して、遂にはゲシュタポが送り込んだ内通者を逆に犯人に仕立て上げる。
ベルトルト・ブレヒトが参加した脚本が面白い。前の年に公開された『カサブランカ』と同じ様にナチスに占領された国を舞台にして非占領国にエールを送る戦意高揚映画ではある。
しかしプロパガンダ色は薄く民主主義を守る為に戦うチェコ国民がもし観たらとても励まされたのではないかと思った。
2025年現在、ロシアがウクライナを占領しようと始めた戦争は開戦から3年目を迎えた。ハマスに千人の国民を誘拐された為ガザ地区を空爆するイスラエルは子供を含めパレスチナ人を五万人殺害した。
ホロコーストの被害者であるユダヤ人国家がパレスチナ人を地上から抹殺しようとしている。
今も独裁国家が人間を虐殺し続けている。そしてこの映画が製作された当時、民主主義の盟主だったアメリカは独裁的な大統領が人権と民主主義を破壊しまくっている。なんと世界は様変わりしてしまったことか!