監督はウェイン・ワン。
群像劇の『スモーク』が代表作だと思うが、コメディなんかも得意な才人監督。
今回は、中国人父娘をわだかまりを静謐に表現した映画を撮った。
主役は中国人の父と娘。
娘は結婚してアメリカ北西部の町スポーケン在住、先頃、中国人の夫と離縁した。
父はロケット工学の技術者。
娘を心配して、アメリカまでやって来た。
ひとが行き交うことも少ないアメリカ北西部の町。
父と娘も交わす言葉がない。
娘の行状を慮って父親は何かと世話を役のだが、娘には重荷に感じる・・・
ひととひととは通じづらい。
父と娘であっても。
そんな小さな物語を、ウェイン・ワン監督は巧みに、丁寧に描いていく。
父と娘が初めて交わすアメリカでの食卓。
アメリカ風のトマトと煮込んだ鶏の煮込み。
中華鍋さえない娘の台所。
密かに入った娘の部屋で見つけたマトリョーシカ。
中味の人形が男と女が交互に入れ込んである・・・
友だちと夕食を共にするといいながら、独り映画館で映画を観る娘。
話を交わす知人も上手く見つけることができず放浪する父親。
公園のベンチで見つけたマダム。
マダムの言葉も英語でもなく、中国語でもなく、でもカタコトの英語で「気持ち」だけは通じ合う。
マダムは、実は、イランからの移民。
複雑なアメリカの様子、チャイニーズ・イン・アメンカの様子を簡潔に描き出していく。
父と娘のわだかまりも、映画終盤に簡潔に描かれる。
ドラマを求める観客からすれば、肩透かしのような感じだろうが、淡々と語る父親と自ずと父親の語りを聞いてしまう娘の図など、とても映画的に感じる。
こういう静謐な映画が好みなので、ちょいと点は甘くなってしまいます。