他人に対する醒めた目線。実の親であっても、自分の家族から見たら他人
ネタバレ
この公開の前年に
『しゃべれどもしゃべれども』
という佳作があっただけに、
タイトルからは今ひとつ独自性を窺えない映画でしたが、
観て大正解でした。
離れて暮らす老父母との関係は
自分の身につまされました。
(父親が次男に
「お母さんに声だけでも聞かせてやれ」
と言った言葉とか)
そして、
息子を亡くした母親が
ずっと心に溜めていた悲哀に胸を突かれた一方、
我が子以外に対する残酷さには戦慄しました。
(命日に家の中に迷い込んだ蝶に
死んだ長男の魂を見る母親の姿。
また、
長男が命と引き換えに助けた青年が
毎年命日に訪れることについて、
次男が
「彼もつらそうだからもういいんじゃないか」
と言うのに対し、
母親は
「年に一度位つらい思いをすべきだ。」
と静かに言い放つ様。)
「他人」に対する残酷さは
女性特有の気質かと思えるくらい、
母親と長女は似ていました。
特に長女。
実家にいるときは、
最年長の子らしいしっかりした性格からか、
両親を労わっていましたが、
自分の家庭の母親の立場になると
両親ですら「他人」扱いしているようで、
戦慄しました。
(実家から帰る車内で、
夫が「死んだ長男の部屋を壊したくないのだろう」
と両親を気遣ってみせるも、
「死んだ人は両親の面倒を看られないんだから」
とけんもほろろに言う様とか)
どこにでもありそうな家族の
何とはない一日を描いているだけなのに、
各キャラクタがリアルなせいか、
とても心を揺さぶられました!