戦後10年の日本や世界にあった気持ちは続いているだろうか
ネタバレ
昭和初期、瀬戸内海の小さな島の分教場に来た新任の女性教師が、時代の流れにもまれながら初めて担任した新一年生の生徒たちを生涯にわたって見守って生きていく。
初見はチュー坊の頃、お正月のテレビ放映。その後、大学生のとき、社会人になってからと2回見ていて、今回は都合4回目の鑑賞だ。
名作中の名作なのにそれほどで再見していない。同じ年(1954年)の名作で、やはりチュー坊の頃に初めて見た「七人の侍」は今まで10回近く見ているのに比べたら半分以下だ。
もうちょっと言うと、本作品を見るチャンスはけっこうあったのだが、なかなか見ようとしなかった。それはひとえに…。
泣くのがわかってるから。
という実に情けない理由で、結局予想どおり?そうなった。
教師が着任して一年生の教室で出席を取る。返事する生徒の顔が映ったとたんにもうダメだ。この女の子はユリの花のお弁当箱をほしがってたけど… とか、やんちゃそうな男の子は軍隊へ行って… とか、以前に見たときの記憶がよみがえってきて涙が出そうになってしまう。
再見が少ないのは面白くないから、ではなく、いろんなエピソードが強烈に残っているから、そして泣かずにいられないから。ひっくりかえして言えば、それだけの力を持った作品だということだ。
ところで、公開当時(1954年)の人たちはどう見ていたのだろう。おそらく、自分たちと同じ時代の人びと、同じ思いを持つ人びとの物語として、自分の経験のどこかに重ねたに違いない。(それは、東日本大震災を知っている僕らが朝ドラ「あまちゃん」や「おかえりモネ」を見たときの感覚に近いかもしれない。)
それゆえか(と言うのはおこがましいが)、本作品はこの年のキネマ旬報ベストテンで第一位(「七人の侍」は第三位)、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール大賞を受賞した。そして、戦争の時代を生きたという感覚が通じるのは日本だけではないらしく、アメリカのゴールデングローブ賞外国映画賞受賞、ベネチア映画祭金獅子賞ノミネートなど、海外でも本作品は高く評価されている。
戦後10年の日本や世界にあった戦争忌避の気持ちは続いているだろうか。戦後80年の今にそう思わせる。