日本の農村の嫁不足問題や後継者問題、それに連動してのフィリピーナたちの出稼ぎ事情(じゃぱゆきさん問題)といった当時(80年代から90年代?)の社会問題を背景に置いたヒューマンドラマ、いやラブストーリーと言った方が良いか。
企画、製作、脚本。主演を大地康夫が勤めているというのが意外。この社会問題、あるいは原作(小檜山博)によほど思い入れがあったのだろう。それは彼が演じる主人公正男の必死さに現れている感じ。
強面だけど人の良い農家の一人息子で嫁探しに必死になっている中年男性という役どころはこの人のためにあるようなもの。その人の良さが災いしてフィリピンパブのホステス(ルビー・モレノ)の結婚詐欺に引っかかってしまう。こういう話は当時確かによく耳にした記憶あり。必死に女を探すけどもちろん見つからない。
そこから主人公の憔悴の帰国となるかと思いきや、茫然自失となった彼はマニラの雑踏を一人彷徨うという意外な展開になる。映画はこのフィリピンパートの部分が面白い。
スラム街(トンド地区)を彷徨う正男の姿はいつの間にか浮浪者然となっていてこの街に馴染んでいるところがおかしい。
タレント事務所の日本人社長(清水紘治)に拾われ、そこで持ち前の要領の良さ、人の良さを発揮、タレントスカウトとしての才能を開花させることに。向こうの芸能事務所の実態を垣間見せてくれ興味深い。正男がいつのまにか英語やタガログ語を駆使しているところもご愛嬌だ。
映画は結局地元で堅気の仕事に就いているクリスティナ(アリス・ディクソン)にフォーカス。彼女の実家も農家。親のために仕事の合間に農作業を手伝うような健気さに正男も惚れるというありがちな展開となる。
自分としてはせっかくじゃぱゆきさんたちを描き込んでいるのだからその中から正男の良き相手を見つけてもらいたかったが。そうでないと「じゃぱゆきさん」=詐欺師みたいな印象を与えてしまわないだろうか。
それはともかく映画は冒頭とラスト以外はすべてフィリピンで現地ロケされるという熱の入れよう。フィリピンの経済事情や農村事情などもしっかり描き込まれていて見ごたえがありました。