イキナリ飲んだくれてフラフラの男が登場。タクシーに乗らうとしますが、以前乗車した時にゲロしたとかで、乗車拒否されてゐます。此の男、停職中のチャン警部(ジャッキー・チェン)。
一年前、アジア銀行を襲撃した若者犯罪グループを摘発する為、アジトを突き止めてゐたチャンは、マスコミの会見で「三時間で解決する」と発言、自信を見せます。しかしリーダーのジョー(ダニエル・ウー)以下の犯罪集団はゲーム感覚で応戦し、チャンの部下たちを次々と確保、天井から宙づりにします。チャンは部下を助けるために勝負を受けますが、これに負けてしまひ九人の部下を全員殺されてしまふのでした。
責任を追及されたチャンは停職処分となり、心身ともダメーヂを受けて酒浸りの日々に。殺された部下の一人は、恋人ホーイー(チャーリー・ヤン)の弟と云ふこともあり、ホーイーとも別れてしまふ。
そんなチャンの元へ、「巡査1667」を名乗るシウホン(ニコラス・ツェー)と云ふ若者が現れます。チャンの停職は解け、新たにコンビを組むやうに任命されたと云ひます。シウホンに尻を叩かれる形で、再び犯罪集団を追ふチャン。同時にシウホンの計らひでホーイーとも再会します。
捜査の過程で、犯罪グループの面面には夫々の家庭の闇があり、それらが犯罪に走る背景にある事が分つてきます。更に警察内部に敵と内通した者がゐて、一年前の事件についても事前に警察情報が洩れてゐた事が判明します。さらにシウホンについても、意外な正体が分るのでした......
ハリウッド作品への出演が続いてゐたジャッキー・チェンですが、ホームグラウンドの香港に戻つて暴れてゐます。タイトルに「ポリスストーリー」が入つてゐますが、あの人気シリーズとは別物であります。何より殆どコミカルさを封印し、シアリアスかつ重苦しい雰囲気で物語が進むのです。
冒頭でジャッキーの部下が次々と惨殺される場面は中中観てゐて辛いものがあります。土下座して部下の命乞ひをするジャッキーもらしくなく、目を背けたくなるのでした。しかしこのワルどものアジト、からくりが凄すぎであります。
犯罪集団のメムバアの親は、海運会社、証券会社、不動産業などを営む金持ちばかり。だから「カネが目的ではない」と云はれますが、銀行の金庫の札束を見た時は流石に目を輝かせてゐます。警察への憎しみが原動力のやうですが、あそこまで徹底して憎むのは説得力がイマイチの気がします。
相棒に起用されたニコラス・ツェーが目立つてゐます。ジャッキーの負担を減らさんとしたか、準主役といつても好いくらゐの活躍でアクションもキレてゐます。ジャッキーに接近した理由が最後に分り、しんみりさせるのでした。
そのツェーと結ばれさうになる婦警に扮するのが、ツインズのシャーリーン・チョイ。相変らず可愛い。本来のヒロインの筈のチャーリー・ヤンよりも目立つてゐます。「出前一丁」を食べてゐました。一旦逮捕・拘束されたジャッキーとツェーを逃がす金星あり。このシーンでは、明らかに脱獄したのが分るのに、皆が皆知らぬふりをするのが良い場面でした。
ジャッキー自身の生身のカンフーアクションも復活し、香港繁華街での大アクションも見せます。ビル上から一本の綱で三人が次々と落下するシーンとか、運転手が撃たれた暴走バスを止めるジャッキーの大奮闘とかは眼が離せません。しかしあれだけバスの乗客がゐて、誰もハンドルを操作しやうとする人はゐなかつたのか。せめてブレーキペダルを踏んで一旦止めたかつたですな。勿論さうしたら映画的には詰らないんですけど。
成龍映画の特長であるコミカル度は低いけれど、見所は沢山ある娯楽作品に仕上つたと存じます。ヒロインの顔の傷は治れば良いなと念ずるばかりです。
ところで、予告篇のナレーションで「香港の存亡をかけて戦ふ」みたいな言ひ廻しをしてゐましたが、既に現在の香港は死んでしまつた。映画に関しても同様で、真に自由な映画を作りたい人は外国へ出て製作するしかなくなつたと、こないだテレビで云つてゐました。剣呑剣呑。