スピルバーグ監督が意識したという、フランク・キャプラ監督作を思わせるような、古き良きアメリカ映画テイスト。これはコメディと言ってもいいだろう。そもそもトム・ハンクスはコメディがお得意であった。今ではアメリカを代表する名優の一人であるが、本作では久々に若き日の彼の芝居を再見させてもらった思いである。演じるのは、母国のクーデターにより、アメリカの空港から出られなくなってしまった、架空の国・クラコウジア人のビクター・ナボルスキー役。何せ言葉が通じない。ハンクスはこの窮地に陥った人物を軽妙に演じ、またまた好感度大だ。
物語はほぼこの空港内で展開される。スピルバーグは、ニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港ターミナルの巨大なセットを造って撮影したというから驚く。広大なセットと、何百人というエキストラだけでも凄く、リアルな空港にしか見えない。この空港内で働く人々と、ビクターとのやりとりが、とてもハート・ウォームで、観ていて気持ちが良い。
しかし、当初はビクターも煙たがられる存在。それが様々な問題を乗り越えながらの、従業員たちとの交流で、彼の人望が上がっていく。唯一敵となる存在が、国境警備局代理局長のディクソン(スタンリー・トゥッチ)。昇進が掛かっているので、面倒毎はご法度なのだ。ビクターとの対立、そして和解があるかどうかも、物語に重要な局面をもたらすことになる。
ビクターとの、ちょっとしたラブ・アフェアのお相手は、キャビンアテンダントのアメリア。キャサリン・ゼタ=ジョーンズが、とにかく美しい。映画内では、「39歳だが27歳と言っている」とのことだが、20代と言われても、何ら遜色がない。二人の関係は果たして…。
そしてビクターは、何しにニューヨークを訪れたのか。ずっと大切に持っている缶。中身を聞かれると“ジャズ”と“約束”だと言う。その意味するところは…。彼が冒頭で話す英語にもヒントがあった。懸命に覚えてきたのだろう。目指す場所とその目的を知った時、暖かな思いが込み上げてくるのだった。