五本の指

ごほんのゆび|Five Fingers|----

五本の指

レビューの数

10

平均評点

78.6(27人)

観たひと

38

観たいひと

7

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 1952
公開年月日 1952/10/23
上映時間 0分
製作会社 20世紀フォックス映画
配給 20世紀フォックス極東
レイティング
カラー
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「イヴの総て」のジョセフ・L・マンキーウィッツが監督した作品で、L・C・モイズィッシュのスパイ実話を映画化したもの。製作は「出獄」のオットー・ラング。原著を「陽の当る場所」のマイケル・ウィルソンが脚色。撮影は「砂漠の鬼将軍」のノーバート・ブロディン、音楽はバーナード・ハーマン(「戦慄の調べ」)の担当である。主演は「砂漠の鬼将軍」のジェームズ・メイスンに「輪舞」のダニエル・ダリュウで、以下「黒ばら」のマイケル・レニー、「イヴの総て」のウォルター・ハムデンが共演、舞台からオスカー・カールウェイズが参加している。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

第二次大戦中、中立国トルコに駐在する英国大使の執事ディエロ(ジェームズ・メイスン)は、大使の信頼を奇貨として機密書類を小型カメラに収め、そのネガをドイツ大使館武官モイズィッシュ(オスカー・カールウェイズ)に売りつけようとした。機密書類が本物であることを知ったドイツ大使フォン・パーベンは早速これを利用、かくてディエロはシセロの偽名で着々と財貨を獲得するに至った。更に彼はかつて執事として仕えたスタヴィスカ伯爵の未亡人アンナ(ダニエル・ダリュー)を語らい、彼女をモイズィッシュに近付けて機密の売買に当たらせた上、金と押しとで彼女を征服した。一方、機密漏洩に気付いた英国は逆間諜トラヴァース(マイケル・レニー)をアンカラに派遣、危うしと見たディエロはアンナとともにスイスへ逃亡する準備を始めたが、アンナはいち早く彼の金も拐帯して先にスイスへ逃げてしまった。一文無しになったディエロは最後の手段と連合軍ノルマンジイ上陸作戦の機密を手に入れイスタンブールで10万ドルの価格をもってモイズィッシュに売りつけたが、トラヴァースに狙われ出したので南米へ高飛びした。ナチ諜報部は、手に入れた機密を英国のトリックとして問題にしなかったが、これこそ後にドイツ敗北の要因となった作戦計画であった。リオ・デ・ジャネイロで豪壮な邸宅に収まったディエロは、一時は平和な暮らしを続けるかと思われたが、あるとき訪ねてきた官憲が、彼がドイツ大使館から受け取った英国紙幣はすべてニセ札であった証拠を突きつけられた。アンナが持ち逃げした金も同じくニセものだったのである。ディエロは、山とつまれた札を風に散らしながら、はかない最後に笑いこけた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1953年新春特別号

外国映画批評:五本の指

1952年11月上旬号

マンキウィッツと「五本の指」:

1952年10月上旬秋の特別号

試写室より:五本の指

1952年9月下旬号

外國映画紹介:五本の指

1952年6月上旬号

グラヴィア:五本の指

2020/12/15

2024/01/01

70点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


これは映画「五本の指」ではありません。「わが名はキケロ・ナチス最悪のスパイ」のレビューです。

ネタバレ

KINENOTOにはトルコ映画「わが名はキケロ・ナチス最悪のスパイ」はいくら探しても見当たりません。そこで同じ主人公を扱った映画「五本の指」を借りてレビューを書くことにしました。後日、KINENOTOに新規に掲載されたら、そちらに転記するつもりです。

題名が何ともおどろおどろしいので、こけ脅しのチープな代物かと半分舐めてかかって見始めたような気がする。だから尚更、この作品の緻密な展開に居ずまいを正した。サスペンス映画としてよく出来たストーリーで、いつ正体がバレるかとハラハラしながら見入った。

第二次世界大戦下でのスパイ映画であるが、立ち位置が米英連合国側でもなくナチスドイツ側でもなく、トルコ側であるところが目新しかった。主人公(イリアス・バズナ別名キケロ)(※1)の行動基準が自由主義側かファシズム側か、どっちなんだと見ていて混乱した。こちらの了見の狭さゆえの混乱である。

(※1)wikipediaではキケロの本名を「エリアサ・バズナ」と表記している。

主人公キケロはイギリス将校の下で執事として働き、雇い主の機密文書を盗撮してナチス側の将校・モイズィッシュに売る。この映画の主人公の立ち位置は、周辺のどの国とも手を握らない、トルコの自立に軸足を置いている。ナチス将校モイズィッシュと情報提供で往来しているうちに、モイズィッシュの秘書・コルネリアへの愛が芽生える。コルネリアには精神遅滞の子どもが居る。彼女はナチスのエリート主義が惹き起こす精神遅滞の子ども虐殺の陰謀に我が子が巻き込まれないかと慄(おのの)いている。しかもモイズィッシュもまたコルネリアに恋愛感情を抱いているのだ。人間関係が複雑になってくる。
話は本題に入っていく。キケロが提供し続けるイギリスの機密文書にノルマンディ上陸作戦が含まれていた。情報はモイズィッシュから総統ヒットラーに上げられていく。

これだけのエピソードを縦横無尽に交錯させて盛り上げていく脚本が巧い。難を言えば、子どもが集団でガス室に送り込まれるのを母親であるコルネリアが救出するために強制収容所まで車を走らせる展開は頂けない。視覚的に救出のプロセスを描いてサスペンスを盛り上げようとしたのだろうか。この辺りはモタモタして折角の緊張感が弛緩した。

連合国とナチスとの戦闘映画はいっぱいあるし、密かに連合国側に立ちながらナチスに抵抗するいわゆるレジスタンス映画もいっぱいあった。しかし、この映画のように、二者択一ではなく、まさに第三の道を進もうとした姿勢は目新しい。

実際にはイギリス側は執事キケロのスパイ行動を察知していて、敢えて偽情報を掴ませて泳がせていたという説も存在するらしい(wiki)。

余談ながら、
キネノートに登録さるている素材を借りて、異なる演し物をレビューとして記載したのは、留さんのアイデアにインスパイアされたものです。留さんは時々それをおやりになる。
例えばキネノート「蛇皮の服を着た男」の映画に文学座2023年5月アトリエ公演「地獄のオルフェウス」のレビューを貼り付けておられる。
「わが名はキケロ・ナチス最悪のスパイ」のレビューの下書きは2020年には書き上げていました。KINENOTOにこの映画が新規搭載されたら、レビューを掲載しようとときどき確認していましたが、一向にその形跡がない状態が続きました。留さんの貼り付け方法から一つのアイデアを思いつくまで既に3年を経ていました。

2021/09/04

2021/09/04

85点

購入 
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階級差の物語

2021年9月4日に鑑賞。DVDにて。1時間47分48秒。スタンダード・黒白。20世紀フォックス映画。一部、トルコ語、ドイツ語、ブラジル語。

「五本の指」の「5」は、スパイ(諜報員)のことである。「第五戦線・遠い道」(1957)の第五戦線は「諜報戦」のことである。

正確なタイトルは「5 Fingers」である。

原作:L・C・Moyzischの本「5 Fingers The Story of Operation Cicero」 [Former Military Attache' at the German Embassy at Ankara, Turkey]と出る。

アバンタイトルで、「1950年10月18日の英国国会で元在トルコドイツ大使館つき武官モイズイッシュが書いた「5本の指」という本の内容が質問された。1944年トルコのアンカラのドイツ大使館でノルマンディ上陸作戦を含む極秘情報がドイツに漏れていたと記されている」答弁「本の内容は事実だと認めざるを得ない」「本作は事実に基づく物語である。屋外での撮影はすべて実際の場所で行われた」

ジェームズ・メイスン(アルメリア人・英国大使の執事)いいですね。ダニエル・ダリュー(亡夫がポーランド貴族のフランス人・スタヴィスカ伯爵夫人)も柄に合った好演です。結局、根本はこの2人の階級差の物語である。

John Wengraf (ナチに批判的なドイツ大使・貴族である。フォン・パーペン閣下)いいね。「ワーグナーを聞きすぎて頭痛がする」→中立国トルコ首相のパーティーで日本軍人に言う。英国大使が到着するとドイツ大使と武官モイズイッシュは退出する。時間差でパーティーに招待している。かかる音楽も変わる。

ラストでディエロ(ジェームズ・メイスン)が金庫からノルマンディ上陸作戦の極秘文書を盗みだす場面のサスペンス描写が素晴らしい。

2019/08/02

2019/08/02

100点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
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ハラハラドキドキで心臓バクバク

映画館でスクリーンを観ている間ずっと、心臓がドキドキしっぱなしの全編にわたってハラハラさせられるジョセフ・L・マンキウィッツ監督のサスペンス映画。本当に面白かった!
自宅に帰って来てからも心臓がバクバクして、痛い気がする(笑)

現在、シネマヴェーラ渋谷では「名脚本家から名監督へ」と題して、プレストン・スタージェス、ビリー・ワイルダー、ジョセフ・L・マンキウィッツという3人の監督作品を集中上映中。観たいのが結構あるので大変(^^;

本日観た『五本の指』は、第二次世界大戦中の中立国トルコが舞台。冒頭、英国議会で「“五本の指”なる本は、大戦中のスパイについて書かれているが我が国の情報を流した者が本当に居たのか?」という質問に対して、「本当に居た」という回答がなされて、テロップで「この映画は実話に基づいており、ロケも屋外ロケは現地で撮影したもの」という説明書きがあり、かなりリアル。

物語は、イギリス大使館に勤務するディエロ(ジェームス・メイソン)がドイツ大使館を突然訪れて「連合国軍の機密情報を買わないか?」と持ちかける。半信半疑のドイツ側だが「情報が本物だったら…」と取りあえず一度情報を買ってみると、本当に持ちかけられた通りの空爆が発生した。一挙に「どんどん情報をよこせ」というドイツ側に対して、「次からは値上げだ」というディエロ。
ドイツ側がディエロに付けたコードネームは“キケロ”(スペルを見ると“シセロ”に読めるが字幕は“キケロ”だった…)。
キケロは大使館の金庫からせっせと情報を出しては小型カメラに撮影して、ドイツ側に高額で売る。
このスパイの存在は、007のように「自分の国のために敵の情報を得ようとしたりする」のではなく、「自分の金儲けのために、自分の国の情報を敵に渡す」のが面白い。
しかし、この状態が安定して続くのではなく、観ているこちらは「いつかバレるのではないか?」とハラハラが始まる。

また、この映画にはヒロインも登場する。元フランス人だがポーランド伯爵に嫁いで伯爵夫人となったものの、夫は戦争で死んでしまい、財産は没収された伯爵夫人がいる。これを演じるのは、ダニエル・ダリュー。
ダニエル・ダリューは古典的美人で、マックス・オフュルス監督の『輪舞』・『たそがれの女心』などの美しさが光っていた。
この伯爵夫人は、財産没収されてほとんど無一文、指輪を質に入れたりしているのだが、ジェームズ・メイソン演じるディエロから「手を組まないか?」と誘われる。ディエロは元々、伯爵と伯爵夫人に仕えていたことがあり、伯爵夫人はディエロ憧れの女性だったのだ。ディエロは伯爵夫人に「立場を利用して情報を得て欲しい。そのかわり、二人で南米に逃亡できるだけの金は得る」ということで、結託することになる。

こうして物語がどんどん進んでいくのだが、「スパイがバレないか?」に加えて、「ディエロは情報を渡すだけ渡したドイツ側に殺されるかも…」、「ディエロは自国に不利な情報漏洩したとしてイギリス側に殺されるかも…」といったダブルどころかトリプル以上のハラハラドキドキが最後まで続く。

ラストの驚きも秀逸だが、ここでは割愛。
本当に面白いサスペンス映画であった。
大傑作!

2019/06/30

2019/07/02

75点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


個人が流す重大機密。

ネタバレ

<フィルム・ノワールの世界 vol.4>での上映作品。

今回の特集で「無謀な瞬間」にも出演していたジェームズ・メイスンの主演作。トルコを舞台に連合軍のノルマンディー上陸作戦などの極秘情報をナチスドイツに流した諜報活動が描かれる。

これほど重要な情報漏えいが国家主導の作戦ではなく、個人から起こっている辺りの意外性も興味深い。現代の個人情報漏えいと根っこは同じか。

彼を裏切り金を持ち逃げする伯爵夫人の裏切りっぷりもある意味見事で、きっとこういう女性像は峰不二子のキャラクターの中などに生きている。

また、逃げ果せたと思った南米で判明する事実は「ヒトラーの偽札」などでも描かれた事実を考え合わせると歴史的にもあり得る頷ける話。

2018/05/02

2018/08/09

85点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
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数あるスパイ映画の中でも傑作と呼べる映画

シネマヴェーラ渋谷の世界名作映画特集、「五本の指」は初めて観る映画でしたが、これまでわたくしが観たマンキウィッツ映画は全て彼自身が脚本も書いていたのに対し、この「五本の指」はマイケル・ウィルソンの脚本だったところ、単に演出に徹したマンキウィッツも見事な演出力を見せ、数あるスパイ映画の中でも傑作と呼べる映画にしていました。
映画の冒頭、1950年の英国議会において、戦時中在トルコのドイツ大使館武官だった男が書いた本が議事に取り上げられ、“ここに書かれたことは事実なのか”と問う議員に対し、外相が“事実だ”と応えたのち、“この映画で描かれる物語は事実であり、実際の場所で撮影された”という字幕が出て、映画が始まります。
物語は1944年に遡り、中立国だったトルコの首都アンカラを舞台に、英国大使付の執事ジェイムズ・メイソンが、オスカー・カールウェイズ扮する独大使館武官に接近し、“英国の機密文書を映したフィルムを買わないか”と持ち掛け、以後、メイソンは英国大使が持ち帰って金庫に仕舞っている機密文書を毎晩のように取り出しては密かにその文書を撮影し、次々とフィルムをドイツ側に流してゆくというスパイ物語が展開します。
ジェイムズ・メイソンのスパイは、独大使館や独本国では“キケロ”というコードネームで呼ばれているのですが、このキケロが流す英国機密について、在トルコ独大使は正しい情報だと確信しているものの、独本国のゲシュタポはキケロが二重スパイに違いないと疑って、入手した情報への対処をせずに傍観を続ける、というところが面白く、かつ、リアリティがありました。
ジェイムズ・メイソンのスパイ行為に協力する人物として、某伯爵夫人のダニエル・ダリューが出ているのですが、ちょうどこの映画の前夜に観たオフュルス「快楽」と同じ年の製作で、彼女の艶っぽい美しさに魅了されます。
このダニエル・ダリューがジェイムズ・メイソンを騙して、彼がこれまでに貯めていた金を全部持ってスイスに高飛びしてしまい、一文無しになったメイソンは、最後の大勝負とばかりに連合国のノルマンディー上陸計画を記した文書を撮影して、これを独大使館武官に大金で売りつけることにし、その頃には英国大使館でも機密文書が横流しされていることに気付いて、マイケル・レニー扮する諜報部員が犯人を調べてジェイムズ・メイソンに疑いの目を向けており、メイソンと独武官の取引が行われるイスタンブールを舞台に、サスペンスフルな逃亡・追跡劇が展開した末、メイソンがリオ・デ・ジャネイロで優雅な生活を送ろうとした矢先、彼の上に降りかかる見事な逆転劇は、恐らくフィクションだろうと思いますが、有名なナチスによる偽札作りの話を巧く物語に取り込んで、抜群に面白いスパイ物語に仕立てています。

2018/05/04

2018/05/06

70点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
字幕


Dデイは漏れていた

‪#0369 シネマヴェーラ渋谷「五本の指」。1952年製作のL・C・モイズィッシュ原作、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督。第二次世界大戦末期、1944年の中立国トルコを舞台にイギリス大使の執事がドイツにノルマンディー上陸作戦の日程等の最高機密を漏らしていた実話を基にしたスパイアクションである‬。