ちょっと消化不良の「台風クラブ」って感じがしました
多分、原作は松本大洋だから、ヒリヒリするような名作で、この子たちは、明確に底辺社会を描いた映画に出てくる子たちと同様にさいなまれていて、というか、すでに壊れていて、それが表面に出てくるきっかけは、誰かが指を一度ぱちんと鳴らすような一瞬なのだ。この映画は、「これが、死だ!」と叫んだ少年を本物に見せた「台風クラブ」にあったマジックというかシナジーというか、そういうこの年代の少年少女たちの痛みを創造しきれなかったのです。
松田龍平の素かなと思わせる演技。彼の演じる九條の醒めた態度が、自分を凡人と認識している青木にはまぶしくて、彼を超えたくてなにかを行き過ぎてしまった。青木を演じた新井浩史だけは、「この野郎殺すぞ」の語気が語尾につれてだんだん強くなって、”こいつ本心は相当ヤバい奴感”がしっかり伝わってきたけど、これも素かもしれない。この二人以外は、みんなまだ殺意を持つほどひどい目にあってないい子たちって感じでした。全体の流れも、エンディングに向かってエネルギーが高まっていくとはいえなかったなぁ。
青木は、AKIRAの鉄雄だよね。ほかにもこの関係性を保ってきてある日崩れる、っていう二人を描いた作品はけっこうある。幼なじみだったり兄弟だったり。
テレビで平成懐かしのロック」みたいな番組をやってて、ブルーハーツとブランキーと初期のミシェルの当時の映像を一曲ずつ流すのを見てたら、MCがこの映画のことを「話してたので見てみました。ミシェルだけビジュアルの完成度が高くてめちゃくちゃキュートでした。(私はブランキーのファンクラブに入ってましたが)