これで本当に良いのか、この切なさ悲しさ、小説にこもる切れ味鋭い男女関係とそれにインスパイアされる子どもへの愛情、そして生きることと死ぬこと。小説で読むグサリグサリと食いこむような表現が映画ではうすれ、まるでわかりやすく解説するかのような絵空事。
やはり原作を超えることが難しいということなのだろうか。
小説特に純文学に近い小説の映画化には相当な度胸がいるだろう。かの今村昌平が『黒い雨』で苦悩したあのモノクロのピカドン、キノコ雲を例にするまでもないが、この映画にはその苦悩すらも見あたらない。なぜだろう。何かが足りない。そう思わせる美しさ。
面白くない。