男女共同参画センター横浜(フォーラム)で本作を再び観た。片渕須直監督アフタートーク付のイベント上映である。
本作の内容と施設の性格から女性の観客のほうが多いと予想していたが、6対4の割合で男性客が多かった。
本作の主題は「主体性」と還元できる。その重要性を強調するため型に押し込められる魔法が登場する。主体性喪失の期間、主題は強調されるが物語は停滞する。ここに本作の構成上の難点が存在する。
主体性の回復を魔法ではなく自力で成す。この過程を丁寧に描き感動的である。この後、物語は動き出すが急激というほどではない。急激に動かすことで先の停滞を緩急の「緩」とできるが敢えてしていない。物語を型に押し込めたくなかったとも言えるだろう。
アフタートークでは本作の制作資料などについて語られた。昔のヨーロッパをイメージしていたので実際に訪れたザグレブやロンドンの建物を参考にしたと言う。アンドリュー・ワイエスの父であるN.C.ワイエスの挿絵も参考にしたと言う。その他様々な資料を利用したが結果としてフランスの古い生活文化の割合が大きくなり、フランスで上映されたときに「日本人がなぜフランスの古い世界を描くのか」と質問されたとのことである。その質問が一つのきっかけとなって後の作品につながったと言う。
アフタートークではさらに特定のシーンのイメージ元になった映画についても紹介された。イングマール・ベルイマンの「処女の泉」、アンジェイ・ワイダの「地下水道」、フェデリコ・フェリーニの「甘い生活」の三作品である。いずれも映画学科の授業で見たと言う。どのシーンか敢えて書かない。本作を繰り返し鑑賞する場合にはどのシーンか考えるのも一興であろう。