舞台は1984年の北イングランドにある貧しい炭鉱の町。
ビリーは母親を幼い時に亡くし、父親のジャッキーと血気盛んな兄トニー、そして認知症気味の祖母と暮らしている。
彼は音楽好きの少年だったが、ジャッキーは彼にボクシングをやらせたがった。
だが彼は人が殴り合うボクシングにどうしても興味が持てない。
そんな彼はあるきっかけでバレエ教室に興味を持つようになる。
コーチのサンドラは彼の才能を見抜き、彼を特別扱いするようになる。
だが当然父親はビリーがバレエを習うことを許さない。
ビリーは自分の心に従うべきか、それとも家族を優先すべきか、究極の選択を迫られる。
とにかくビリーの前には障害が多い。
母親を亡くしたことで家族からは温もりが失われたようだ。
町ではストライキが行われており、ジャッキーとトニーは先導してスト破りに対して罵声を浴びせる。
当然働いていないから彼らに収入はない。
時代的にもまだまだバレエは女がやるものという認識が強かったため、尚更彼がバレエを続けることは困難だった。
だが直向きに自分の好きなことに打ち込み続ければ、必ず誰かの心には届く。
結果はどうなっても必ず夢に続く道は開かれる。
ストーリーはとてもシンプルで、繊細な10代の少年の心の揺れを巧みに表現したシナリオが秀逸だった。
サンドラの娘デビーと羽毛布団を撒き散らす際どいシーンも印象的。
UKロックとの調和も見事で、オープニングのT・レックスの『Cosmic Dancer』に合わせて飛び跳ねるビリーの姿、そして反抗心を剥き出しにして『Children of the Revolution』の曲とともに路上をタップで駆け抜ける姿が心に残る。
そして初めてジャッキーの前で心の赴くままにビリーが踊るシーンが感動的だ。
自分たちには先がないが、ビリーの夢だけは叶えてやりたいとジャッキーがスト破りをするシーンも胸が熱くなる。
ビリーの直向きさは折れたジャッキーの心をも奮い立たせることになる。
家族、いや炭鉱の町が一丸となってジャッキーを応援する後半の展開も感動的だった。
ジャッキーは踊っている時にどう感じるかを尋ねられても即答できない。
彼が踊る理由は理屈では語れない。
身体が自然と反応し、踊っている間はすべてを忘れて夢中になれる。
これこそが本当の才能なのだろう。
ラストの展開は蛇足のような気もしたが、いつまでも心に残る名作なのは間違いない。